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冥界の神…精神分析とユング派の理解|ドナルド・カルシェッド

冥界の神(disディス)について。冥界の神というのは、dissociation(解離)を力を持ち、恐怖で人を凍りつかせて、五感、身体、思考、感情、記憶などをバラバラにする力を持っています。冥界の神は、精神分析では、過酷な超自我であり、ドナルド・カルシェッドの言葉では、内なる悪魔的人物像(保護者/迫害者)であり、ユング派では、否定的なアニムス元型と言うかもしれません。その他にも、生きながらに死んだような感覚のある人の身体の中の生々しい怒りと怯え、無に帰すブラックホール、自我機能を乗っ取る交感神経システム、原始的防衛システム、情動的人格部分、怪物的な内的対象、解離させる強靭な力の作用、死んだふりからの攻撃性、耐えられない痛みからのナルシスティックな怒り、加害者に埋め込められた怒りや怨念、周りを震撼させる唸り声の主など様々な表現があると思います。

 

身体的にみると、人は大きな危険を感じるとき、胸から、首、頭部にかけて圧迫感を感じて息が止まりそうになります。首の神経や血液、リンパの流れが遮断されたようになって、そこを境に身体の上部と下部がばらばらになるような恐怖に襲われることがあります。顔全体は圧迫感を感じて、赤みをおびて汗が出て、眼は見開くような感じになり、充血し、涙が眼球いっぱいに広がっていきます

 

無垢な子どもが、度重なる痛みに耐えられなくなると、冥界の神(怒れる神)が取り憑いて、内側には凄まじい怒りが溢れます。それ以後、子どもは外側の世界を警戒しつつ、心の中は天国と地獄のバランスを保とうすることに専念するようになります。冥界の神は、自分へ攻撃してくる存在であり、自分のなかにいながら自分でない存在になります。精神分析的に言うと、麻痺しがちな自我機能を攻撃して、集団から遠ざけようとする性質を持ちます。無能で弱弱しい自分のことを罵倒していき、肉体にあらゆる拷問的苦痛を与えていく存在であり、身体を引き裂き、八つ裂きにしてバラバラにします。また、自死は己の苦痛を回避する安楽な手段だとして、それよりもさらなる生き地獄を与えようとしてきます。そして、自分が関わる人間たちを悩ましい状況に置き、傷つけ、裏切り、憎しみ合うことを望んでいます。

 

ここからは、Donald Kalsched (2013)『In Trauma and the Soul』の冥界の神(dis)についての描写を取り上げます。 冥界の神(ルシファー)は、三つの頭(ベルゼブル、蝿の王、サタン)を持ち、心理分析でよく議論されている存在です。カルシェッドは、冥界の神を解離するものとして、言い換えると、心の解離の防衛を人格化した解離を起こす主体と述べています。そして、痛みという耐えられないもの、というか経験されないため、冥界の神のようなネガティブなものが現れると述べています。彼は、何か内面化することを拒んでいる。情動はイメージから区分され、精神は身体から避けて、ピュアなものは、経験から分離される。人生というのは区分の間に分別されることで人生が進んでいく。トラウマを負った人の癒しが始まると、心理的に耐えられない記憶がどんなものかとか、身体的に刻印された記憶とか、子どもの象徴されているものの痛みの記憶とか、統合されるために再び現れようとするが、冥界の神は、ものすごく強い抵抗の要因として現れます。

 

精神分析ではどのように理解されているか

フロイトは、死に対する衝動が人格されたものと理解していました。

メラニークラインは、赤ん坊の人肉食的な母親の乳房にたいしてのサディスティックな衝動、または死への衝動として捉えていました。

ビオンは、冥界の神を何かを破壊するような超自我の一部、何かをつなげるということに対して衝撃を与える何かが人格化されたもの。

ウイニコットは、原始的な自己防衛-初期のトラウマ

フェアバーンは、無意識の中にある自己の無邪気な部分に攻撃を仕掛ける妨害工作者

グロットシュタインは、心理の真中にあるような黒い穴を描いたようなもの。無力の力とか何もないこと、それは何もない状態よりかは吸い込まれるような何もなさ。

ネヴィルシミントンは、内なる暴君はナルシスティックなシステムの部分であり、間違った神として捉えられるもの。

 

カルシェッドは、ユング派の伝統の中での冥界の神についてまとめています。ユング自身は、冥界の神を分裂とか分解させる力として捉えていて、快目的で分離させる力、無意識の集合体の層で現れてきます。それは心理的な障害の面を持っています。ユングの後期は冥界の神を探求していて、破壊的な側面は、影の集まりで、自己の暗黒の側面で、旧約聖書の神ヤハウェの統合されないサディズムと述べています。

 

のちのユング派の研究では、

マイケルフォーダム1974年の論文「自己の防衛」

シュワルツサラント1987年にヤハウェのついて

ピンコラエスティース1992年に女性の拒食症における内なる捕食者

リンダレナードはトリックスターを描き、地下にいる男とか批判的なジャッジ、地下の世界にいるキャラクターを描き

バーバラスティーブンサリバン2010年にネヴィルシミントンの影響を受けて、健康な心理の統合のエネルギーに対して、ナルシスティックなエネルギーの内なる構造を描きました。

 

Donald Kalsched.(2013):『Trauma and the Soul:A psycho-spiritual approach to human development and its interruption』

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コメント: 4
  • #1

    四次元 (月曜日, 30 7月 2018 19:28)

    時間の擦れ と 空間の歪み の 間に 解離がおきているのかも

  • #2

    四次元 (月曜日, 30 7月 2018 19:41)

    アインシュタイでさえも解けない謎の部分があったようですよね、案外?神さえも判らないのかも…?でも、やはり、最後は神のみぞ知る!!

  • #3

    四次元 (火曜日, 31 7月 2018 02:14)

    解離現象は宇宙から?ブラックホールが宇宙の綣?
    もしくはその隙間から闇の者達?がきて地を端ってさまよっているのか?

  • #4

    四次元 (水曜日, 10 4月 2019 19:10)

    神と悪魔の闘いは いつになったら 答えがでるのか?令和時代に梅の花で祝福となるのか?