回避性人格障害の恋愛

▶回避性パーソナリティ障害とは

 

回避性パーソナリティ障害の人は、子どもの頃の外傷的な体験に苦しんでいることが多く、これ以上、傷つかないように、そして純白さを守ろうとしています。回避性パーソナリティ障害の原因は、はっきりしていませんが、子どもの頃の虐待とか、学校社会のいじめとか、最初の恋愛のトラウマとか、性体験のトラウマなどを負っていて、幸せな思い出がほとんどないことが多いと言われています。回避性パーソナリティ障害は、境界性パーソナリティ障害の回避タイプや、回避性愛着障害、自己愛過敏型、シゾイドパーソナリティ障害と重なるところがあります。回避性の人の色のイメージは、白や透明、青色、桃色が多いです。

 

▶愛がトラウマ化し、自分に自信がない人々

 

回避性パーソナリティ障害の人は、人を愛したとき、愛されたいと願い始めたとき、そして、異性の相手に無防備になったとき、過去に埋もれていたトラウマのスプリットした部分が意識に上り、恐怖や不合理な衝動に襲われ、関係を続けることが難しくなります。例えば、子どもの頃から、自分を殴り、またはネグレクトし、あるいは性的にも虐待する親を死にもの狂いで愛していたとします。と同時に、自分の愛情を無価値だと思わされ、欲求を持つことを恥ずかしいものだと思わされ、無視する親に怒りを感じて、生活全般がしんどくなり、愛と憎しみとか善と罪悪感の過剰な葛藤が大きくなりすぎます。そして、自分の感情や欲求や思いもすべてを飲み込むしかなく、そうしていたら、いつの間にか自分の感覚すら分からなくなり、麻痺や離人化していきます。大人になった今では、愛されたことがないから、愛し方なんて分からず、すべてのものに感情移入することが出来ません。そして、外の世界で愛する人を求めると、自分の親を求めることの耐えられない心の痛みと結びつき、子どもの頃の気持ちが溢れてきて、求める気持ちと、それが叶わなかった気持ちに傷つきます。愛そうとすればするほど、何気ない風景が過去の出来事と折り重なり、自分の奥底に眠る本音に気づいてしまうので、なんとか自分の気持ちを騙そうとします。彼らは、愛がトラウマ化しており、誰かを求めることが、忘れられていた子どもの頃とリンクして、不安や恐怖が高まるので、現実の人と深く繋がることができません。そして、そんな自分のことが大嫌いで、まったく自信も持てなくて、真っ当な恋愛することが難しくなります。

 

▶大人の自分と内なる子どもの分裂

 

大人の自分と過去の無意識の内なる子どもとの間では内的な分裂が存在します。大人の自分は子どもの頃の孤独、寂しさ、生きる意味のなさが意識に上がってこないように、忘れたり、切り離したり、封印したりして、見て見ぬふりをしています。内なる子どもは、夢の中で、または、擦りガラスの向こうで、寂しそうにひとりぼっちで膝を抱えていたり、あるいは、なんであなただけが…と大人の自分に怒っていたりします。彼らは、子どもの頃から自らの傷をいかに癒そうかと無意識に努力しており、解離や空想などの心理的防衛によって、自分自身にトリックをかけています。そして、現実の居場所を探し求めていますが、それを見つけても怖くなってしまい、また壁を作ります。彼らは、自分を受け入れてくれる慣れない暖かさが怖くて、また居なくなるとか、置いて行かれるとか、裏切られる不安を抱えています。 

 

▶トラウマの内なる世界

 

ユング派のカルシェッドや対象関係論的に言うと、トラウマを受けた人の内的世界には、理性的な保護者と批判的な迫害者がいます。自分のこころに取り憑くこれらの内的人物像は、これ以上傷つかないようにと、用心深く子どもの頃の再トラウマ化を防ごうと組織化されたものです。この人物は、外の世界の人々とのあらゆる可能性は危険なものであると判断し、現実との接触を妨げるために魔法をかけています。その一方で、彼らは、内的人物像が念入りに作り上げた巨大な繭の中で包まれながら世話を受けています。そして、内的人物像の防衛的ファンタジーの世界にすっかり耽溺していき、外の世界の人々と結びつく喜びを失います。彼らのこころの内的世界には、美しいラプンツェルに魔法をかけ、塔に幽閉した魔女のような悪魔的人物像が棲みついているようにも見えます。

 

回避性パーソナリティ障害の人は、新しい出会いがあり、ロマンティックな夜を過ごしたあと、相手が興味をもってくれたのにも関わらず、それ以上関係を続けるのが難しくなります。女性の場合は、否定的なアニムス(女性の無意識の中にある男性像)が取り憑いていて、残忍な男性の人格化が見られます。否定的なアニムスは、女性が男性と繋がりを持とうとしたときに活発に働き始めて、頭の中で話す声となり、バラバラにさせられる悪夢を見せ、体を麻痺させて、希望を挫いていきます。そして、彼らは、悪夢に怯え、恐怖や迷いが入り混じったなかで落ち着いていられず、自分が自分で無くなる不安から自分を守ろうとして、大切な関係を切り離してしまいます。