境界性パーソナリティ障害のチェック

▶境界性パーソナリティ障害のチェック26項目

 

慢性化したトラウマ体験の悪影響は、脳内(扁桃体の興奮、海馬の萎縮、前頭前皮質の変化など)の器質的変化をもたらし、自律神経システムは調整不全に陥り、身体は命の危機に瀕した経験を記憶していて、その人個人を特徴づけている行動や考え方、知覚の在り方にダメージを与えます。また、子どもから大人になるまでの発達的変化の過程で形成されていく人格構造に欠陥をもたらします。複数のトラウマによって形成される人格の障害としては、境界性パーソナリティ障害が知られています。ここでは、境界性パーソナリティ障害に見られる特徴をまとめています。

 

1)メンタライズ機能の低下

被虐体験やいじめ被害などにより、フラッシュバックや恐怖状態、身体症状、被害感が強くなると心の余裕が無くなります。心の余裕の無い状態では、他者の行動から、他者の内面を想像したり、推測したりが難しくなり、また、自分自身を外側から見ることが出来なくなります。そして、相手の気持ちを理解したり、相手に合わせることが難しくなり、合わせようとしても疲れてしまいます。

 

2)愛着対象への見捨てられ不安

人間不信や不安がベースにあり、好意を向けてくれる対象に対して、攻撃としがみつき(嫌い/行かないで)があり、安全100%を求めています。基本的に、好意をもたれても、いつ居なくなるのか心配になり、実際にあるいは想像上の見捨てられに伴う不安があります。感情的で不安定なため、攻撃したり、しがみついたり、試し行動をしたりと相手とぶつかり合う緊密な関係性になります。一人でいるときは、不安、恐怖、寂しさ、孤独、苛立ち、興奮、麻痺などが入り混じった世界で生きていて、自分と向き合うと空虚に襲われるため、何かに依存しないと心のバランスを保てません。

 

3)過覚醒状態

強いストレスにより過覚醒症状(興奮しているとき)になると、前頭葉の実行機能が十分に機能しなくなります。そして、心の余裕が無くなり、周囲が見えなくなって、リスクを考えずに無計画な行動を取ったり、問題行動を起こしやすくなります。過覚醒症状のときには、自分の限界に対する認識を欠き、理性的な判断を求めても難しいと言われています。

 

4)衝動行為と抑うつ

過覚醒になると、目前の刺激に対して、身体がその場その場で反応して、リスクを考えずに衝動的な行動をとります。特に、逃げ場のない状況に追い込まれて、切迫感や感情的な苦痛が高まると、落ち着きがなくなり、居ても立っても居られなくなって、その場に凍りつくか、過食、浪費、自傷、暴力などの危険で、損失が生じることを行います。その一方で、感情的になってしまうことで、何度も失敗を繰り返してしまい、自分を嫌悪して恥じて、みじめな、おちた(抑うつ)状態になります。

 

5)断片化した自己と情緒不安定

自分でありながら、自分に属しているとは感じられない思考や感情があるような状態で過ごしています。そして、意味もなく怒りが沸いて来たり、訳もなく悲しかったりと感情をコントロールできないことに悩んでいて、自分が自分でなくなることを恐れています。なかには、自分の中の悪魔(トラウマの犠牲者の内的世界では、自我を攻撃し虐待する残忍な人格化が見られる)が暴れ出すことを恐れており、自己破壊恐怖がある人もいます。

 

6)自己と対象の分裂

解離された情動やトラウマを持っている人は、それが原因で生じる激烈な感情状態や生理的混乱から起こる身体症状を最も悪いものだと経験しています。そして、頭の中は、自己と対象を分裂させる防衛が働いており、自己と他者の肯定的特質と否定的性質の両方をあわせ、現実的に全体として捉えることに失敗していきます。耐え難い痛みは、分裂排除されていき、過剰な自意識/自己嫌悪、精神/身体、善/罪悪、生/死、成熟/未熟、高慢/従順、純潔/不潔といった二分法の中に確かさを求めて、自己と対象の否定的性質から自分を守ります。例えば、過剰な自意識が自分の嫌悪する身体の部分にリスカしたり、根底にある醜い自分を軽蔑したり、自分で自分を責めたり、他者の悪い部分を批判したりが起こります。

 

7)大きな矛盾と葛藤による行動化

ある者のせいで自分の人生を台無しにされたという意識と、自分の人生は報われていないという意識が根本にあります。そして、「憎くてたまらない気持ちと、どうしても許せないけど、でも許したいという気持ち」など、大きな矛盾と複雑な葛藤を抱えています。普段は、他のことをすることで意識をずらして考えないようにしていますが、思い出すと、イライラ、殺意、思いがけない行動に走ってしまうことも…。

 

8)物事の見方

不確かな人生や動かしがたい他者との関係に耐えることが難しく、こころで思ったことがそのまま現実であるかのようにこの世界を体験していきます。その結果、他者の感情や要求を認識する能力に問題が出てきます。両極端な考え方に陥ったり、物事の見方が固定化されたり、妄想的で自他の区別がついていない状態で過ごしています。自分の思い通りにいくと気持ちは楽になり、自分の思い通りにいかなくなると不快になります。

 

9)人間関係に過敏で全か無か思考

人間関係に過敏で、傷つきやすく、否定的に自分を捉え、この世界を悲観的に眺めています。また、物事の好き嫌いがはっきりしており、白黒極端に分けることで、フラッシュバックとか、自分が自分で無くなる不安とか、他者に傷つけられることから自分を守ろうとします。

 

10)嗜癖/依存症

寂しくて、孤独で、自分の居場所が無くて、自分に注意を向けても空っぽな自なので、その慢性的な空虚感を何かで埋めようとしています。ストレス解消のために悪いことだと分かっていても、ある特定の行為や物質使用を続けようとします。例えば、浪費、性行為、アルコール、ギャンブル、無謀な運転、むちゃ食い、恋愛依存

 

11)解離性健忘と被害者意識

怒ったときの記憶が抜け落ちたりします。そのため、いつも傷つけられた被害者であり、都合がいい記憶しか残らないので、自分が加害者だと自覚できない事が起こります。その結果として、パートナーとトラブルに発展しやすくなりますので、注意が必要です。

 

12)人生の方向性の喪失

単純で短期的なことには取り組めますが、複雑で長期的なことは、予想外のことが起きるか不安で、恐怖や脅威を感じやすく、緊張やパニック、統制の利かない不安、体調不良を引き起こします。そのため、新規場面も苦手で、人生計画が不安定になります。また、何かに取り組んでも、すぐに断念してしまって、自分は何もすることができないという諦めが条件付けられていきます。

 

13)安心感や基本的信頼感がない

「一人じゃ寂しい、皆と仲良く過ごしたい」という受け入れてほしい気持ちはありますが、実際、温かい居場所は居心地が悪く、長続きしません。それは、「どうせ自分なんか愛されない」という自己否定的な声や、「その場限りの優しさはいらない」という人間不信があるからです。

 

14)救いようのない世界に生きている

人間不信と本当の愛情に飢えています。心の中の自分は出口の見えない迷路のような内的世界の中を彷徨っています。親しい相手を見つけたらどさくさに紛れてその迷路の中に誘い込み、自分が有利で相手が不利になる構造を作り出します。そして、身動きがとれなくなった相手を縛り付けて、自分に都合のよいマイルールを押し付けます。

 

15)聡明で感受性があり、豊かな空想を持っている

高機能のBPDの人は、トラウマを乗り越えて、過去の大変な状況を精一杯生き延びてきた経験から、知性や創造性を兼ね備えています。そして、遠回りしてきた人生ゆえに、世間一般の普通の人とは違い、非常に聡明で、並ならぬ感受性があり、豊かな空想を持っていたりします。

 

16)同一性障害、不安定な自己像や自己感

自分のルーツやアイデンティティが希薄です。また、自己感覚や皮膚感覚、時間感覚、空間感覚など通常の人とは違っていて、自分を得たいの知れない人物と思っていることがあります。

 

17)自己不全感からの安全希求や強迫観念

様々なトラウマ体験を受けていて、自律神経系や免疫系に問題が出ていて、感情や自己調整機能が調整不全があります。そのため自己の不全感から、思考や行動をコントロールしようとして、強迫観念や強迫行為に陥りがちです。また、完全主義で自分の安全を保障したがる側面があります。

 

18)多面性を持っている

子どもの頃に虐待など受けている可能性が想定されます。人間は、生きる死ぬかの世界のなかで精神や肉体が耐えれなくなると、ある種の変性意識状態を通じて自分を変化させることで生活全般の困難を乗り越えていきます。それと同時に、自己同一性の障害を抱えることになり、一貫した自己像が持てなくなります。人によって場面によって気分がコロコロ変わり、自分で自分をコントロールすることが難しい状態にあります。ある時は、傷つきやすく未熟で窮乏し子どもっぽく、またある時は、傲慢で尊大で横柄で利口ぶっていて頑固です。

 

19)子どもっぽさと大人の部分

社会の役割をこなす大人の部分と、発達不十分な子どもの部分があり、不安定な自己像を持ちます。ストレス下では解離状態になり、子どもになったり、大人になったりします。子どものときは、横柄でわがままだったり、臆病で何も出来なかったりします。大人のときは、社会のなかで頑張ろうとしています。この間をさまよってしまうと、本当の自分が分からなくなり、いつも心の中は空っぽです。

 

20)退行傾向と闘争モード

さまざまな外傷体験を負うことで、その衝撃により、神経系の発達が原始的な時代に逆戻りします。それ以降、心の成長が遅くなり、何時までも心は子どものままになってしまって、声は弱弱しくなります。子どもでいることのメリットは、正常な大人では正気でいられないくらい悲惨な体験を抱えることができます。一方、安全が脅かされそうになると、子どもの部分を守るかのように、闘争に満ちた情動的人格部分が怒りをぶち撒けます。この間をさまよってしまうと、頭の中は混乱していき、身近な人間に対しては、罵るような態度を取ってしまいます。職場などでは、不適応にならないために、自分の感情や感覚を切り離し、想像力を無くし、ひらすら目の前のことをこなします。

 

21)ネガティブな思考

過去の後悔と将来に対する不安から、考え事をしてしまうと、生きているのが怖くなり、ネガティブな思考に支配されていきます。さらに、不安な感情でいっぱいになると爆発してしまって、自分がコントロールできなくなるので、自分が失敗することや周りに迷惑をかけることを恐れています。

 

22)パニック発作

見捨てられ体験や支配、脅し、二重拘束などの対人関係のストレスに反応して、過剰な覚醒状態になり、呼吸は浅く早く、動悸も激しくなるにつれ、どうしていいか分からなくなり、居ても立っても居られなくなります。そのあと、正常な反応が妨げられて、身体が凍りつき、急速に低覚醒状態に陥ると、顔面は青白く、呼吸はほとんどできなくなり、心臓は止まりかけます。この急激な生理的反応を自分ではコントロールすることができないので、死の恐怖を感じてしまうと、パニックやめまい、痙攣、腹痛に襲われます。以後、パニックになることを恐れるようになり、予測不能なことや不確実なことに対して、不安や恐怖を感じていきます。

 

23)完全性や理想を求める精神からの攻撃

トラウマ体験による痛みやこわばり、過覚醒による興奮した身体、身体感覚の麻痺、無力感や崩れ落ちる体験など、情動と感覚の側面は身体に残り続けています。身体は耐え難いトラウマ体験と同一化しているため、完全性や理想を求める精神によって攻撃されます。その分かりやすい例としては、自殺や自傷になります。

 

24)倒錯行為

生活全般が困難になると正気だとしのぎ切れなくなり、何もないふりや明るいふりをして過ごすようになります。そして、苦痛の度合いが笑いや快楽に変わっていきます。彼らにとって、苦痛は快楽や解放であり、希望は絶望になり、好きという感情は寂しさに変わり、この大きすぎる感情の扱い方が分からず、やがて何も感じなくなり、感情は消えていきます。

 

25)妄想様観念と解離性症状

外界に対して、対人恐怖や気配過敏があり、身体内部では生理的混乱が生じていて、人から傷つけられることを恐れて警戒しています。生活全般の困難や恐怖が強くなると、現実世界をシャットダウンして、現実か夢か分からない世界で生きるようになります。自分の世界に深く入るようになると、現実より妄想様観念が作られます。また、外の刺激により、激しい感情が掻き立てられると、自分を客観的に見れなくなり、自分は正しいという誇大妄想や自分は傷つけられるかもという被害妄想に取り憑かれることがあります。

 

26)スピリチュアリティへの親和性

情動の嵐の中を生きている一方で、時折、固まる様に閉ざされていた感覚や感情、喜びの全てが心の中から溢れかえるような「聖なるもの」を体験するような人がいます。この五感の全てが震える神秘状態は畏怖すべきものであり魅惑的なものでもありますが、この体験により、聖性とかスピリチュアリティへの親和性が高まります。トラウマ治療では、このような神秘体験を意図的に持っていけるようにします。

 

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