境界性パーソナリティ障害のチェック

▶境界性パーソナリティ障害のチェック

 

慢性化したトラウマ体験の悪影響は、脳内(扁桃体の興奮、海馬の萎縮、前頭前皮質の変化など)の器質的変化をもたらし、自律神経システムは崩壊し、身体は命の危機に瀕した経験を記憶していて、その人個人を特徴づけている行動や考え方、知覚の在り方にダメージを与えます。また、子どもから大人になるまでの発達的変化の過程で形成されていく人格構造に欠陥をもたらします。複数のトラウマによって形成される人格の障害としては、境界性パーソナリティ障害が知られています。ここでは、境界性パーソナリティ障害に見られる特徴をまとめています。

 

1)メンタライズ機能の低下

被虐体験やいじめ被害などにより、フラッシュバックや恐怖状態、身体症状、被害感が強くなると心の余裕が無くなります。心の余裕の無い状態では、他者の行動から、他者の内面を想像したり、推測したりが難しくなり、また、自分自身を外側から見ることが出来なくなります。そして、相手の気持ちを理解したり、相手に合わせることが難しくなり、合わせようとしても疲れてしまいます。

 

2)愛着対象への見捨てられ不安

好意を向けてくれる対象に対して、攻撃としがみつき(嫌い/行かないで)があります。基本的に、好意をもたれても、いつ居なくなるのか心配になり、攻撃したり、しがみついたり、試し行動をしてしまいます。一人でいるときは、不安、恐怖、寂しさ、孤独、苛立ち、興奮、麻痺等が入り混じった世界で生きているため、何かに依存して心のバランスを保っています。

 

3)過覚醒と行動化

強いストレスにより過覚醒症状(興奮しているとき)になると、前頭葉の実行機能が十分に機能しなくなります。そして、心の余裕が無くなり、周囲が見えなくなって、リスクを考えずに無計画な行動を取ったり、問題行動を起こしやすくなります。過覚醒症状のときには、理性的な判断を求めても難しいと言われています。その一方で、感情的になってしまうことで、何度も失敗を繰り返してしまい、自分を嫌悪して恥じて、うつ状態になります。

 

4)断片化した自己と情緒不安定

自分でありながら、自分に属しているとは感じられない思考や感情があるような状態で過ごしています。そして、意味もなく怒りが沸いて来たり、訳もなく悲しかったりと感情をコントロールできないことに悩んでいて、自分が自分でなくなることを恐れています。なかには、自分の中の悪魔(トラウマの犠牲者の内的世界では、自我を攻撃し虐待する残忍な人格化が見られる)が暴れ出すことを恐れており、自己破壊恐怖がある人もいます。

 

5)自己と対象の分裂

解離された情動やトラウマを持っている人は、それが原因で生じる激烈な感情状態や生理的混乱から起こる身体症状を最も悪いものだと経験しています。そして、自己と他者の肯定的特質と否定的性質の両方をあわせ、現実的に全体として捉えることに失敗していて、妄想の世界の入り込んでいます。頭の中は、自己と対象を分裂させる防衛が働いており、過剰な自意識/自己嫌悪、精神/身体、善/罪悪、残酷さ/脆弱さ、成熟/未熟、高慢/従順、純潔/不潔といった二分法の中に確かさを求めて、自己と対象の否定的性質から自分を守ります。例えば、過剰な自意識が自分の嫌悪する身体の部分にリスカしたり、根底にある醜い自分を軽蔑したり、自分で自分を責めたり、他者の悪い部分を批判したりが起こります。

 

6)安心感や基本的信頼感がない

「一人じゃ寂しい、皆と仲良く過ごしたい」という受け入れてほしい気持ちはありますが、実際、温かい居場所は居心地が悪く、長続きしません。それは、「どうせ自分なんか愛されない」という自己否定的な声や、「その場限りの優しさはいらない」という人間不信があるからです。

 

7)大きな矛盾と葛藤による行動化

ある者のせいで自分の人生を台無しにされたという意識と、自分の人生は報われていないという意識が根本にあります。そして、「憎くてたまらない気持ちと、どうしても許せないけど、でも許したいという気持ち」など、大きな矛盾と複雑な葛藤を抱えています。普段は、他のことをすることで意識をずらして考えないようにしていますが、思い出すと、イライラ、殺意、思いがけない行動に走ってしまうことも…。

 

8)物事の見方

こころで思ったことがそのまま現実であるかのようにこの世界を体験しています。そのため、両極端な考え方に陥ったり、物事の見方が固定化されていたり、妄想的で自他の区別がついていない状態で過ごしています。自分の思い通りにいくときは気持ちが楽になり、自分の思い通りにいかなくなると苛立ちます。

 

9)不安ベースの全か無か思考

不安や自己不全感がベースにあり、未来を悲観的に捉えています。また、物事の好き嫌いがはっきりしており、白黒極端に分けることで、フラッシュバックとか、自分が自分で無くなる不安とか、他者に傷つけられることから自分を守ろうとします。

 

10)空虚感と嗜癖/依存症

寂しくて、孤独で、自分の居場所が無く、慢性的な空虚感を抱えており、それを何かで埋めようとします。悪いことだと分かっていても、ある特定の行為や物質使用を続けようとします。例えば、浪費、性行為、アルコール、ギャンブル、無謀な運転、むちゃ食い

 

11)解離性健忘と被害者意識

怒ったときの記憶が抜け落ちたりします。そのため、いつも傷つけられた被害者であり、都合がいい記憶しか残らないので、自分が加害者だと自覚できない事が起こります。その結果として、パートナーとトラブルに発展しやすくなりますので、注意が必要です。

 

12)同一性障害、不安定な自己像や自己感

自分のルーツやアイデンティティが希薄です。また、自己感覚や皮膚感覚、時間感覚、空間感覚など通常の人とは違っていて、自分を得たいの知れない人物と思っていることがあります。

 

13)完全性や理想を求める精神からの攻撃

トラウマ体験による不快な痛み、過覚醒による興奮した身体、身体感覚の麻痺、崩れ落ちる体験など、情動と感覚の側面は身体に残り続けています。身体は耐え難いトラウマ体験と同一化しているため、完全性や理想を求める精神によって攻撃されます。その分かりやすい例としては、自殺や自傷になります。

 

14)救いようのない世界に生きている

人間不信と本当の愛情に飢えています。心の中の自分は出口の見えない迷路のような内的世界の中を彷徨っています。親しい相手を見つけたらどさくさに紛れてその迷路の中に誘い込み、自分が有利で相手が不利になる構造を作り出します。そして、身動きがとれなくなった相手を縛り付けて、自分に都合のよいマイルールを押し付けます。

 

15)聡明で感受性があり、豊かな空想を持っている

高機能のBPDの人は、トラウマを乗り越えて、過去の大変な状況を精いっぱい生き延びてきた経験から、知性や創造性を兼ね備えています。そして、遠回りしてきた人生ゆえに、世間一般の普通の人とは違い、非常に聡明で、並ならぬ感受性があり、豊かな空想を持っていたりします。

 

16)スピリチュアリティへの親和性

情動の嵐の中を生きている一方で、時折、固まる様に閉ざされていた感覚や感情、喜びの全てが心の中から溢れかえるような「聖なるもの」を体験するような人がいます。この五感の全てが震える神秘状態は畏怖すべきものであり魅惑的なものでもありますが、この体験により、聖性とかスピリチュアリティへの親和性が高まります。

 

17)多面性を持っている

子どもの頃に虐待など受けている可能性が想定されます。人間は、生きる死ぬかの世界のなかで精神や肉体が耐えれなくなると、ある種の変性意識状態を通じて身体を変化させることで生活全般の困難を乗り越えていますが、と同時に、自己同一性の障害を抱えることになり、一貫した自己像が持てなくなります。人によって場面によって気分がコロコロ変わり、自分で自分をコントロールすることが難しい状態にあります。ある時は、傷つきやすく未熟で窮乏し子どもっぽく、またある時は、傲慢で尊大で横柄で利口ぶっていて頑固です。

 

18)妄想様観念と解離性症状

外界に対して、対人恐怖や気配過敏があり、身体内部では生理的混乱が生じていて、自分が傷つけられることを恐れて緊張しています。生活全般の困難や恐怖が強くなると、現実世界をシャットダウンして、現実か夢か分からない世界で生きるようになります。自分の世界に深く入るようになると、現実より妄想様観念が作られます。また、外の刺激により、被害妄想に取り憑かれることがあります。

 

19)ネガティブな思考

過去の後悔や将来に対する不安から、考え事をしてしまうと、生きているのが怖くなり、ネガティブな思考に支配されていきます。さらに、不安な感情でいっぱいになると爆発してしまって、自分がコントロールできなくなり、周りに迷惑をかけてしまいます。

 

20)パニック発作

見捨てられ体験や支配、脅し、二重拘束などのトラウマ体験中は、過剰な覚醒状態になり、激しく興奮して、動悸が激しくなるにつれ、呼吸が浅く早くなり、どうしていいか分からなくなり、居ても立っても居られなくなります。そのあと、正常な反応が妨げられて、身体が凍りつき、急速に低覚醒状態に陥ると、顔面は青白く、呼吸はほとんどできなくなり、心臓は止まりかけます。この急激な生理的反応を自分ではコントロールできないので、死の恐怖を感じて、パニックやめまい、痙攣、腹痛に襲われます。

 

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