解離状態による犯罪

▶解離性同一性障害と犯罪

 

以前、仲間由紀絵恵が演じる人物が解離性同一性障害という疾患を装って犯罪を繰り返すという設定の「ミスターブレイン」というドラマがありました。解離性同一性障害は、かつては多重人格障害と呼ばれており、幼少期の虐待などの強い心的外傷を受けると、そのつらい記憶を意識にのぼられないように人格が解離し、人格の同一性は損なわれることが原因で、犯罪が引き起こされる可能性があるかどうかを考えてしまいます。解離性同一性障害と犯罪との関係については現実の世界においても色々と話題になっています。実際に司法では、被告が犯行時に心神喪失の状態であったかどうかが争点となり、医師による精神鑑定が重要になっています。「解離性同一性障害があり、心神喪失の状態で意思能力に欠けている」、「別人格の犯行を装っているが詐病でる」などの主張がなされ、責任能力の有無が争われます。

 

ここでは、解離性同一性障害の犯罪だけでなく、小児トラウマのトリガーが引かれると、人は過覚醒や錯乱等の解離状態や、解離性フラッシュバックに陥り、被害者や加害者、時には両方の役をとりながらをトラウマの再演を繰り返すという犯罪について述べていきます。

 

▶犯罪者の子ども時代

 

犯罪者の多くは、酷い子ども時代を送っていて、様々な虐待とか、事件や事故に巻き込まれたり、差別されたりとトラウマ被害を体験しています。例えば、家庭が貧しかったり、お母さんが家出していたり、父親から暴力をふるわれる母親の姿をみていたり、あまりにもしんどくて小さい頃のことをほとんど覚えていないことがよくあります。特に、虐待被害を受けている子どもは、肌を包んで安心させてもらえる温もりの代わりに、酷い暴力に怯えているため、恐怖に凍りつき、麻痺しています。その一方で、興奮して、大人に反抗的で挑戦的な態度を取るので、更なる虐待を呼び込みます。そして、生活全般の困難から、不安で落ち着いていられず、動物的で反射的に危険を感じて警戒し、些細な問題に直面しただけで苛立ち、ストレスホルモンは絶えず高いに状態にあります。ストレスホルモンが高い状態にあると、サバイバル脳になっていき、知覚過敏や過覚醒になります。 過覚醒になると、前頭葉が十分に機能しなくなるため、自分や他者の精神状態を十分に読み取ったり受け取ったりすることが難しくなり、理性的な判断が出来なくなります。そして、不利な状況に立たされると、扁桃体の暴走が止めれなくなり、抑制力や先を見据えた判断力を失ってしまい、自動的に逃走モードや闘争モードに入ります。

 

また、最近では、子どもの頃の医療トラウマが犯罪者を作り出しているとも言われています。例えば、ジェフリーダーマ―など。医療トラウマでは、身体を手術台に無理やり固定されて、麻酔を使わなかったり、中途覚醒しているときに、お腹を切られ、熱いものを入れられることで、恐ろしいトラウマ体験になります。子どもは、身体を動かせず、正常な反応が妨げられ、激しい痛みに圧倒されることで、離人症や機能停止、身体は崩れ落ちていきます。手術後は、PTSD症状のフラッシュバックや対人恐怖、過覚醒、回避行動を取るようになります。特に、痛みを感じることに対して、恐怖が強くて、恐ろしいトラウマ体験をした破壊的な生理的反応に結びつくため、痛みや辛さを消すことを学びます。そして、何も痛みを感じなくなれば、人間らしさもなくなるので、共感性や思いやりは欠如していきます。その結果、自己中心的な性格に変わり、人間らしさを味わうために、スリルや快感を追求していくようになると、ある生物学的ドラマ(自分が過去されたこと無意識に覚えていて再現させる)を演じてしまった場合には、小動物を殺すことから、殺人者になる可能性まであります。

 

▶解離性フラッシュバックや解離状態による犯罪

 

解離性フラッシュバックとは、過去と似たような状況に遭遇すると、現在と過去とが折り重なり、目の前の関係のない人などに対して、過去のトラウマが反射的に光景として蘇ります。そして、同じ臭いを嗅ぎ、同じ身体的感覚に見舞われて、それに対する欲求とか不合理な衝動に圧倒され、半ば自動的に行動や態度であらわしてしまい、解離状態のなかでトラウマを再演させます。

 

例えば、性加害行為(性犯罪)を繰り返してしまう背景には、こどもの頃に性被害に遭っていることがあります。何年経った後でも、過去と似たような状況に遭遇すると、解離性フラッシュバックが起こり、現在と過去とが折り重なり、目の前の関係のない人に対して、反射的に性被害にあった光景が蘇り、半ば自動的に行動や態度であらわして、解離状態のなかで性被害、性加害行為に及びます。本人はこの衝動を恐怖に感じていて、家から出られなくなることもあります。

 

また、痴漢を繰り返して行う背景には、最初は、見つからないから大丈夫と思ってやっていますが、そのときの背徳感がたまらくなくなり、善悪なんかどうでもよくなり、頭が麻痺したように異常な興奮やスリルを楽しむようになります。たとえ本人がもう辞めようと思っても、似たような場面に遭遇すると、身体と脳が自動的に反応するモードになってしまい、理性が届かず、痴漢を辞めれないことがあります。

 

次に、内から湧き起こる攻撃・破壊衝動に悩まされ、その衝動を抑制しようとする背景には、子どもの頃に生きるか死ぬかの命懸けの体験をしていることがあります。例えば、子どもの頃に包丁を持った親に追いかけ回される体験をした人は、現在でも親に似た人が包丁を持ち歩く場面を見ると、生きるか死ぬかの生々しい潜在的な自己保存エネルギーに頭が支配されます。脳や身体は、当時の恐怖を覚えており、この環境は安全であると知っていても、納得させることができずに、極端な意識野の狭窄から、最悪の場合、加害行動に及んでしまうことがあります。本人は、殺意に満ちた衝動をとても恐ろしく感じています。

 

次に、別れ話から別人のようになり、脅迫、暴言、暴力、ストーカー化する背景には、子どもの頃に大切な人を喪失した経験をしていることがあります。例えば、子どもの頃に母親が家出をして二度と帰らなかった体験をした人は、現在でも配偶者や恋人に別れを切り出されると、混乱と興奮と苛立ちと無力感と孤立感が入り混じり、不安と恐怖で心は凍りつき閉ざされます。そして、自分では全く統制できない解離状態になり、暴れ回って、物を壊して、逃げようとする相手をどこまでも追いかけるストーカーになります。本人は、暴れ回ったあと、意識が戻り、自分のとった行動をなんて非常識と反省します。

 

ピーター・ラヴィーンは、「激しい怒りは(生物学的に)殺生の欲求に関わるものである。レイプ被害に遭遇した女性がショックから抜け出し始めたとき(多くは数カ月後か数年後)、加害者を殺したいという衝動にかられることがある。時として、彼女らはこの衝動を実行に移す機会を得る。こうした女性のうち何人かは実際に実行し、殺人罪に問われている。というにも、経過した時間が計画的犯行の証拠と見なされるからである。このような女性が演じている生物学的ドラマは一般的によく理解されていないため、明らかな不公平が生じている。」と述べています。

 

危害や物損などの問題行動を起こすのは、

①故意の行動か、

②傷ついた扁桃体が過剰に働き、闘争モードから半ば自動的に手足が動いての行動か、

③心が凍りつき、固まるように閉ざされて、自分では全く統制が出来ないような錯乱状態の行動か

④生物学的条件に縛られて演じられた行動か

発生する問題行動をこれらの視点にたって十分に検討する必要があるでしょう。

 

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