外傷体験による人格構造の断層に生じる裂け目

外傷体験による人格構造の裂け目

 

障害となる解離症状が起こるのは、その人の身体感覚や時間・空間感覚がバラバラになっているからです。この人格構造をバラバラにしてしまうのが虐待、猛烈ないじめ、親子間のこじれ、頻繁な転居、事件、事故、自然災害、手術の医療ミス、自殺未遂などがあります。人は命を失いかねない危機な場面に曝されると、人は目の前で起こっていることから少し離れた位置に身を置き、自分を危険から切り離そうとします。そして、大きな身体/精神的ショックに対して、知覚の断片化や二つ以上のあいまいな自分が存在するような状態になることがあります。

 

例えば、人が入水自殺を図るとき、死のうとする意志に反して、身体は生きようとする本能が強いため、必死にもがいて泳ぎますが、その生きようとする意志を軽蔑している部分や、体が流され、溺れることで諦めを感じている部分、上空から溺れている自分を冷静に眺めている部分など、神経系が極限まで緊張したのち、身体から精神が離れて断片化していくことが起こります。

 

その他の分かりやすい例を挙げますと

①虐待を体験している子どもと、その虐待を観察している子どもとに分かれます。

②何かを強要をされたときのことを現実感や感情もなく、ただの身体感覚として体験している子どもと、現実感を持ち、恐怖を体験している子どもとに分かれます。

 

親子関係のストレス

 

さらには、子どもが親との関係で言いたいことが言えず、我慢し続けた結果、ストレスが臨界点に達してしまい、解離を起こすこともあります。例えば、子どもが親に見捨てられ体験をして、親の愛情を取り戻す手段が一つも無くなった場合、子どもは恐怖と喪失感と無力感を体験し、泣きわめくとともに、頭が真っ白になり、この世の終わりという崩壊体験していくことがあります。つまり、子どもは、親子関係で切迫した環境や選択肢に迫られ、強いストレスに拘束され続けてもなお、愛を求めて、くっつきたい気持ちの高まりと、見捨てられるとか裏切られる恐怖、そして、しんどくて離れたい気持ちとの間で相反する力と力がぶつかり、葛藤が非常に高まると、背側迷走神経が主導権を握り、機能停止とか凍りつきが生じて、解離性障害を含めたあらゆる精神疾患に罹るリスクは高まります。

 

人格交代と解離(解離性同一性障害など) 

人格交代による問題行動

 

特定不能の解離性障害とか解離性同一性障害の方は、とてもシビアな面を抱えています。と言うのも、自分の記憶のない間に、異なる人格が活動する場合があるからです。この異なる人格が何をしたのかを知るには、第三者に聞いてみないと分かりません。そして、自分とは異なる人格が起こしたトラブルについて、自分が社会的な責任を負わないといけないので、複雑な人生を歩まされます

 

例えば自分の知らない間に、警察のお世話になりかけたり、体に傷をつけたり、身近な人と金銭トラブルになったり、援助交際をしたりする場合があります。また、本人としては、怒りの爆発とかトラブルの時の記憶が抜け落ちたりするため、いつも傷つけられた被害者として都合のいい記憶しか残らない場合には、自分を加害者だと自覚できない事が起こります。その結果、パートナーとトラブルに発展しやすく、離婚、裁判等になりやすいので、十分に注意する必要があります。

 

このような人格の解離は、虐待などの強いストレスに曝されたり、日常生活の困難と急激な変化に対応できなくなり、正常な反応が妨げられることで、人格の一部が分かれてしまって、自分とは別の意識が精緻化され、自律的な活動を始めることで起きます。そして、人格の一部が自律的に発展することにより、既存の意識では認識できにくくなり、自分が自分であることが揺らぎます。こうした人は、1つの身体の中に、2つの魂と2つの記憶を併せ持つようになります。そして、内なる両価的な「何か」があるような感覚や、どちら側かわからなくなる感覚に捉われることがあります。解離の概念を提唱したジャネは、「脳内のすべての心理的な現象は、ひとつの同じ個人的知覚にまとまるのではない。一部は感覚、簡単な映像として独立性を保つ、あるいは、大体ひとまとまりとなり、当初の人格とは独立した、新しいシステムを作る。これらの2つの人格は入れ替わったり、引き継いだりする中身ではなく、大体ひとまとまりとして共存できるのだ。」

 

▶解離性同一性障害の原因

 

解離性同一性障害の原因を考えるうえで、一つ目は、生まれ持って解離のしやすい資質のある人です。また、HSP(感覚過敏、感受性の強さ、繊細さ)の人ほど解離状態になりやいです。もう一つは、発達早期の心的外傷の問題になります。Kluftは、解離性同一性障害の発症に関する4因子説を提唱しています。①被暗示性の高さ。②幼児機器に性的虐待などの心的外傷が加わるということ。③解離の防衛をとることにより多重人格を形成するような、核になる体験があること。④親が、DIDになることを阻止するような養育的態度をとらなかったことなどを原因としてあげています。

 

人格の解離が起こるパターンは様々ありますが、生活全般の困難、身体への危険、見捨てられ体験などがあり、身動きが取れない状態と身体疲労と精神的ストレスから自動的にフッと解離が起こり、日常から切り離されます。そして、変性意識状態のなかで眠りにつき、別の人格たちが日常生活を過ごさなければならなくなります。解離性同一性障害の人は、子どもの頃の記憶がほとんどないことがあります。

 

例えば、幼児期から児童期に生命を脅かすような危険が引き金になり、自分の人生を外側から眺めて、今起きていることは自分ではない、○○ちゃんは何てかわいそうな子なんだろうと別の人格を作ることがあります。また、家庭内の問題、虐待、経済的な要因などにより、子どもがいつ死ぬかわからない状態のなかで、子どもは内側に子どもの人格を作り、子ども同士(心の中にいるもう一人の私と会話して)が必要なものを補いながら生きていこうとします。そして、保護する人格、耐える人格、ただ笑う人格、自分を傷つける人格など、人格がいくつもあるなかで暮らしています。

 

子どもが可哀想な子ども(交代人格)をつくることはとても悲劇的なことです。なぜなら、子どもが加害者から暴力などを振るわれるときに可哀想な子どもが身代わりになるからです。この解離症状は本来の私を守っているとも言えますが、この苦しい体験を切り離す行為が、可哀想な子どもを切り捨てたことにもなるので、罪の意識に苛まれ、自分で自分を責めることがあります。さらに本来の私が背負うべき罪悪を神のように振る舞う人格部分は常に見ており、決して許されてはいけない罪を何倍もの懲罰として仕返すことがあります。そして、自分の体を傷つけて拷問的苦痛を与えたり、人間と関わり傷つけ憎しみ合わせるように、なりすましをしてレイプのお膳立てをしたりと、それは現実の加害者の何倍もサディスティックに振る舞います。