発達性トラウマ障害

無慚にも与えられた

生きる路

懇願によっても

静めることができず

閉じこもるしかなかった

苦難の路

 

▶トラウマの与える影響

 

子どもの頃のトラウマというのは、恐怖と身体を麻痺させます。そして、一瞬にして情動を司る神経系に大きなダメージを与え、脳の神経回路、心的回路、身体内部に過剰なエネルギーが暴れ回って、脳の構造や心臓、お腹の働きさえ変えてしまいます特に、発達早期に命の安全が脅かされるような出来事を体験した子どもは、基本となるベースが出来ておらず、痛みや恐怖に対して脳が敏感に反応して、身体は固まり凍りつき、その後に、絶望があると機能停止や崩れ落ちて、脳機能や自律神経系の働きに多大な悪影響を及ぼし、学校社会や社会生活を営むことが難しくなります。そして、取り返しのつかない恐怖や絶望を処理できないまま、様々な身体症状や精神症状を表して、無力で混乱した状態で大人に成長していくことがあります。PTSDでは、脳のフィルターが全開になり、外界のあらゆる細かいものまで注意が向いて、全部頭の中に入ってきます。情報処理が過剰になると疲れてしまって、不快さが強くなると胸が苦しくなります。そのため、意識の狭め、視野狭窄、過集中、集中困難、多動性、注意散漫、過剰思考、感覚鈍麻、離人、健忘などを使い分けながら情報を処理していきます。また、長年に渡り、自分を虐待する人物に関わるとか、生活空間の全体がストレスになることで、身体を蝕む過覚醒システムが慢性的に活性化して、現実の脅威だけでなく、想像上の脅威(目に見えない敵への不安)に対しても過剰に反応するようになります。そして、脳や身体はトラウマ後の過剰な防衛にすっかり汚染されてしまって、本来の穏やかな自分を見失います。長期的なストレスにより、恐怖や麻痺が悪化すると、自律神経系の調整不全が起きて、過覚醒と低覚醒の間を行き来するようになります。トラウマ症状が重たくなると、胸が痛く、息がしづらく、動悸が激しく、身体がしんどくなり、怖いものが増えていきます。そして、発達のアンバランスさ、感情や自己調整機能の障害、性格の凸凹、免疫システムの故障、ホルモンの症状、精神的症状、発達の偏り、複雑な心理機能、原因不明の身体症状、極端な行動などの様々な状態が見られます。最近では、子ども虐待は、第四の発達障害として注目されており、ヴァン・デア・コルクらは発達性トラウマ障害を診断名の一つとするべきだと主張しています。▶子どものトラウマ研究のページ

 

PTSD(過覚醒、再体験、回避)に診断されなくても、乳幼児期から児童期にかけて、家庭、学校、子どもを取り巻く生活空間の全体がストレス過多になり、小児期の逆境体験がもたらす影響は、脳と身体の神経系、こころの発達にダメージを与え、精神疾患や発達障害、原因不明の身体症状、パーソナリティ障害、その他ありとあらゆる慢性病を発現させる原因になります。トラウマを引き起こす暴力は、DVや虐待、ネグレクトという形で巷に満ち溢れています。一方、法律に適応されるものから、法からこぼれ落ちる暴力まであります。例えば、親の側に統合失調症等の精神疾患や発達障害、パーソナリティ障害、知的障害、ギャンブル、アルコール、自殺企図等があり、機能不全家庭のなかで子どもが普通の暮らしていけなくなります。また、家庭の経済状況が極度の貧困でまともな暮らしができないことがあります。さらに、幼少期の頃に手術ミスによる医療トラウマを受けたり、出生時の医療措置の影響で脳や身体の神経系に深刻なダメージを与えたり、有害物質に過剰に暴露されたりして心身のバランスを崩すことがあります。あとは、性同一性障害の人や性被害にあった人が変えようのない体を持つことの苦悩や、自分を殴り性的にも虐待を受けてきた人が親と同じ血が流れて、同じ遺伝子を持っている苦悩など、この世には様々な形の暴力があります。人間は世の中のあらゆる暴力のなかで、過剰に適応していきますが、些細な刺激に対しても身体の防衛反応が賦活されると、社会には適応しにくくなるので、恐怖や痛み、しんどさ、辛さを感じないようにします。そして、何もないふりをして生きていきますが、心の中は傷だらけなので、人格構造が病的に構造化されます。

 

人は大きなトラウマを負うと、脳のフィルターが全開になったり、視床の部分で感覚情報が断片化されたり、扁桃体という部分が過剰に反応するようになります。脳のフィルターが全開で、扁桃体が過剰に反応するようになると、本来危険でないはずものまで、危険だと感じるようになり、ストレスホルモンを多量に分泌するようになるため、人を慢性的なストレス状態に置きます。ストレスホルモンが激増すると、人はこのストレスに対応するために、身体は無意識のうちに闘争もしくは逃走に備えようとします。そして、些細な物音に過敏に反応したり、常に必要以上に緊張するようになります。さらに、感情が著しく覚醒させられる状況では、麻痺という反応を示すようになり、不動化やシャットダウン、離人、視界がぼやけるといった解離性症状に陥るようになります。それと同時に、原始的な神経が働きが強くなると、自律神経系が乱れて、体調不良およびパニックを引き起こします。また、ストレスに曝されて、海馬が委縮していくと、一週間前の記憶、一年前の記憶、重要なライフイベントの記憶等、通常のもの忘れでは説明できない形で忘却されていき、記憶の定着を悪くさせます。長期的なストレスにより、最初に影響が出てくるのが睡眠障害で、生活全般の困難から落ち着いて過ごすことができず、睡眠の質まで低下していきます。そして、ストレス過多から無意識のうちに炎症を起こす物質に侵されているうちに、副腎疲労になり、心的エネルギーが低下していきます。さらに、HPA系の機能調節異常により、自分の身体の弱い部分から爆発していき、症状化していくリスクが高まり、過敏性腸症候群、自己免疫疾患、線維筋痛症、顎関節症、慢性疲労症候群、心臓病、喘息、がんといった形で表れることがあります。また、自律神経失調症、うつ病、解離性障害、PTSD、原因不明の身体症状に悩まされます。

 

恐怖に麻痺させられ、凍りつくか、崩れ落ちるようなトラウマを負い、治療されることなく、長期化していくと、私である要素と私でない要素に分断されます。トラウマ記憶の中核部分は、私でない要素に解離していくので、自分の意識されない領域に凍結されることになります。ただし、現実場面で解離されたトラウマ(フラッシュバック、悪夢)が意識に現れたときに、恐れおののき、恐怖し、麻痺し、行動化し、身体化します。そして、過去に戻されて無力感に打ちのめされるか、被害妄想に取り憑かれた状態になり、過呼吸やパニックを起こして、身体が硬直したり、ぐったりしてしまいます。そのため、解離されたトラウマの想起は、想像できるうちに最も悪いものと経験されていき、想起させるきっかけや人間関係を回避することで対処しようとします。その結果、複合的なトラウマを負った人は、さまざまな刺激に敏感に反応して、苦痛、恐怖、焦燥、興奮などの状態を引き起こすため、無意識のうちに解離性症状(健忘、離人、麻痺、人格交代等)にはまり込みます。そして、精神的負担を減らすために、出来る限りストレスのない空間に逃避し、苦しいことは避けていきます。方法としては、自分を身体を切り離すとか、自分の世界に深く入り込むとか、依存対象に執着するとか、外の世界の人々との関係を遮断していくことで、そのような体験が無かったかのように組織化されて、安全で保護的な避難場所を見つけていきます。できるだけ楽しいところに逃げ込むことは、生き残りの戦略として適していますが、そこは外の世界の人々とは隔絶された憂鬱な空想が拡がる、愛も喜びもない不毛な場所になることがあります。

 

▶発達性トラウマ障害(児童期の逆境体験)※正式な診断名ではありません。

 

トラウマを負っていても必ずこのような症状が出るわけではありません。トラウマを負っていてもコミュニケーションが得意な人もいます。しかし、トラウマを負った人は、過緊張からコミュニケーションや対人関係等に障害が出やすいのも事実です。また、生まれ持った資質の弱さや脳の特性のアンバランスさ、感覚過敏、周囲にサポートしてくれる資源がない人は、同じストレスを受けても、通常の人に比べて、トラウマや解離性症状、ADHD症状を顕在化しやすくなります。

 

①コミュニケーションの障害

性的に虐待する親を持つことの絶望とか、ギャンブルやアルコール依存にはまる親を持つどうしようもなさとか、いじめられていても戦うこともできない無力な自分とか、父親から暴力を振るわれる母親を見ている無力な自分とか、様々な児童期の逆境体験があります。不幸な生い立ちの子どもは、良い思い出の記憶がほとんどなく、辛いことを思い出すだけなので、人に話すだけエピソードを持っていないことが多いです。また、同じクラスの子どもとの会話は、自分の変えようのない不幸を思い出す言葉が様々に散りばめられていて、躓いたり、傷ついたりしていきます。トラウマを負った幸せそうでない人の頭のなかと、幸せな家庭に育った子どもとか、普通にこだわる世間一般の考え方との間には、大きな壁があります。そして、自分の苦しみなんて、誰にも理解してもらえないので、自分のことを悟られないように外の世界の人々と距離を置くようになります。

 

慢性的なトラウマに曝された子どもは、感情や自己調整機能に障害が起きます。過覚醒システムが作動しているときは、何かに熱中していて、自分勝手でリスクを考えない問題行動を取ってしまい、周りの人に嫌われていきます。その一方で、社会交流システムが機能しているときは、自分は嫌われているとビクビクしながら、周りの視線を気にしています。また、低覚醒システムが作動しているときは、思考や判断力が鈍く、ぼーっとしていて、心がここにあらずな状態なので、その場に慣れるまで時間がかかりますが、無害で不思議な子に見られるかもしれません。ただし、無表情で、体が固まるなどの反応をしているときは、周りの人から気味悪がられます。彼らは、自分の感情や行動のコントロールの効かない状態や人生のどうしようもなさに嘆き、悲しみ、怒り、人間不信になって元気を失くしていきます。

 

②対人関係の障害

健康的な人は、腹側迷走神経と交感神経のバランスがほど良く働くため、外の世界の人々と落ち着いてリラックスして過ごしたり、社会の中で活動的に過ごすことが出来ます。しかし、大きなトラウマを負った人は、フィルターが働かなくなるので感覚過敏になり、慢性的にストレスを受けてしまうと、交感神経と副交感神経のバランスが崩れて、交感神経に乗っ取られていきます。感情や興奮が高まる場面では、自分の理性よりも戦うか逃げるかの反応をしてしまい、過剰な覚醒や感情を抑制しようとして、身体が絶えず緊張させられています。そして、強い感情と葛藤や身体の闘争反応を抑制しなければならない状況にいたり、フラッシュバックや悪夢に襲われて、戦うことも逃げることもできずに、長期にわたる緊張と恐怖が続いたりすると、背側迷走神経が主導権を握って、生き生きとした世界が枯渇して、身動きがとれなくなります。また、集団場面に交じると、複雑な関係性や予測できないことが増すので、気配過敏や視線恐怖が強くなり、過剰な情報処理が必要になって、身体に制限がかかり、体調不良が起きて、疲れやすくなります。さらに、人に悪意を向けられることで、身体が硬直していき、息苦しくなり、胸が痛み、自分が自分でなくなる恐怖や相手に呑み込まれてしまうのではないだろうかという恐れから、人との対面を拒むようなことがあります。その結果、逃避的で無気力で、思考力や意欲も低下し、人間関係そのものが煩わしくなっていき、社会交流システムが遮断されます。人が過覚醒システムに支配されると、細かいことまで調べるようになり、思考が活発化して、活動性が上昇し、物事に熱中していきますが、その一方で、情緒不安定が増して、イライラして周囲に当たるようになります。人が低覚醒システムに支配されると、憮然とした表情になり、人に対して感情が湧かなくなり、無感覚で、人と直接関わっている感じが無くなります。

 

③感覚過敏と鈍麻

人は、大きなトラウマを負うと脳のフィルターが機能しなくなるので、過敏で警戒心過剰で感覚過負荷の状態になり、注意や集中面に支障をきたすようになります。外界のあらゆる情報に注意が向けられていき、自分の感覚に意識が向けにくくなり、情報に圧倒されると胸が苦しくなります。学校の集団場面では、視野狭窄、意識の狭め、過集中、過剰思考、注意散漫、離人、健忘しながら、過剰な情報処理努力しており、脳や身体は休まりません。特に、感覚、情動、光景、臭い、音、声、視線、気配などに強く反応します。例えば、怒鳴り声や雷の音、扉を閉める音の聴覚過敏、化学物質や食べ物の匂いの嗅覚過敏、嫌いな食べ物の味覚過敏、触れられることを嫌がる触覚過敏、影や暗闇、人が気になる気配過敏、体の不快感や違和感から体内過敏など、危険や恐怖を察知する感覚が普通の人より何倍も強くなります。その一方で、恐怖や身体の痛みが激しく、生活全般が困難になっていきそうな場合は、何も感じないようにする感覚鈍麻や離人症、失感情症が起きます。また、トラウマを負うことで脳幹最上部にある視床に集まった感覚情報が島および帯状回皮質に向かう間に断片化していく可能性があります。目や耳、肌を通して入ってくる感覚情報が視床の部分で解離されると、今ここでの知覚される対象のそれぞれが孤立して、断片化し、意識や認識過程の狭窄が起きます。発達早期にトラウマがある人は、感覚過敏と鈍麻の間を行き来していって、ADHDと類似した状態になりやすく、もの忘れ、注意欠陥、過集中、片付けができないなどの行動として現れます。

 

④感情・自己調整機能の障害

小児期にトラウマを体験した子どもは、感情や覚醒度の移り変わりが激しかったりします。例えば、大人の言うことをしっかり聞いている冷静なとき、興奮しやすくスリルを楽しんでいて感情的なとき、エネルギーが切れて無表情で憮然としていて無感覚なときなど、落差が激しく一日のうちにその間を行き来しています。身体の方は、過度にストレスがかかると、硬直していって、全身が重くなり、鬱状態にします。鬱状態から、時間をかけて自然終息すれば、躁状態に切り替わり、気分が良くなります。気分の切り替えが出来ず、訳もなく悲しみ、理由もなく無力感に陥り、意味もなく怒りが沸いたりします。難しい問題に対しては、冷静になることもできるのですが、ほんの些細な問題に直面すると、癇癪を起こしたりします。さらに、夜になると外の気配が暗くなるので急に怖くなり、寝る前に電気を消すことをとても怖がりますが(気配過敏、悪夢を見るから)、お化け屋敷は全然平気だったり、日中は誰よりも危険な状況を楽しんでいたりします。あとは、食事の場面では、過食や拒食を繰り返したりします。苦手なものを食べることは、周りからは当たり前のように見えますが、彼らの身体は過敏に反応して、危機が迫ったようになり、顔全体に圧迫感を感じて、赤みおびて、汗が出始め、目は見開き、充血し、涙が眼球いっぱいに広がります。基本的に、不快な刺激に対して、過敏に神経が反応しやすく、痛みが瞬間的に走ったり、過剰に覚醒させられたりするため、ストレスや不安、動揺に対しての耐性領域が著しく狭いのが特徴です。

 

⑤過覚醒

ほんの一瞬、刺激に敏感になるため、身体が勝手に反応して、気管支の活動性が上昇し、呼吸は浅く早く、心拍数は上昇し、血管は拡張し、発汗がみられます。過覚醒は、情動に溢れていて、理性が利きにくく、興奮した状態であり、衝動的な行動をとることがあります。トラウマを負った人は、扁桃体が過敏に反応するため、過剰に覚醒させられ、混乱し、イライラして、神経系も尖り、危険があるかどうかを入念に調べて、非常に警戒しています。そして、外からの精神的なストレスに反応しやすくなり、不安やストレスが高まると、交感神経の働きが活発になり、理性の働きよりも情動の方が強くなって、怒りや攻撃、逃走などの反応を示します。そして、情動の嵐のなかでは自分を客観的に分析できなくなり、周囲が見えなくなって、リスクを考えずに無計画な行動を取ったり、注意散漫になったり、パニックになったり、過集中になったり、自己中心的な行動を取るようになります。人は過覚醒の症状のとき、勝手に手足が動いたり、口が勝手に喋ったりすることがあります。理性でなんとか自分の身体の反応を抑えようとしても、難しくて、癇癪を起こすことがあります。また、過覚醒を抑えようとして、過食、アルコール、薬物、買い物、セックスなどの代償行動に陥ることが多いです。

 

⑥低覚醒

刺激に対して、鈍感になり、気管支の活動性が低下していき、呼吸がしにくく、喘息になりやすくなります。また、心拍数は低下し、血圧も下がっているため、めまいやふらつき、頭痛、パニックがよく起こります。その一方、胃腸だけは活動性が増加しているため、吐き気や腹痛が起きたり、下痢しやすくなります。外の気配が怖くなると、現実の世界よりも自分の心の世界に入り込んだり、身体の中に閉じ込められたり、身体の外にはじかれてしまったりと無力感に満ちた体験をしているかもしれません。また、表情が乏しく、ぼーっとした状態で過ごしていて、過去の恐怖や痛みを感じないように自分から切り離します。そして、生活全般が困難になると、自分が感じるさまざまな身体や時間感覚がわからなくなり、何も感じられないとか、何も考えることができないとか、エネルギーが枯渇して抜け殻のようになるとか、夢の世界のなかで生きているような人もいます。症状としては、うつ、解離性症状、心と身体の麻痺、失感情症、離人症、現実感喪失症等です。▶解離性症状・低覚醒の子どものページ

 

⑦回避行動

恐怖や恥、フラッシュバック、パニック、身体的な症状を呼び戻す引き金となるものを回避しようとします。しかし、危険なものに遭遇をしないように避けていると、次第に行動が制限されていき、人混みを避けたり、交通手段が使えなくなったり、外に出ることも難しくなって、家に引きこもるようになります。

 

⑧フラッシュバック(再体験)

外からの刺激により、怖い体験を突然思い出し、凍りついた感覚、情動、光景、臭い、音、声がフラッシュバックとして目の前に現れて、今まさに起きているかのように再体験します。 睡眠中にフラッシュバックが起きると悪夢になります。フラッシュバック中は、脳の働きが通常の状態とはまるで異なっていて、頭痛や吐き気、身体のこわばり、恐怖、被害感、腹痛などの非常に辛く苦しい状態になります。人はフラッシュバックや悪夢により、疲れ切ってしまうので、生活に大きな支障をきたすようになり、仕事や家事、学校等に通いたくても通えなくなることがあります。▶PTSDフラッシュバックのページ

 

⑨自己イメージ

自分に対するイメージが、過度に否定的か、あるいは空想的で誇大化されている場合があります。人からどう見られているか気にしており、華やかに振る舞いみんなの注目を集めようとする反面、自分に自信がなくストレスやプレッシャーにひどく弱いことがあります。また、子どもの頃にトラウマを受けると、矛盾や分裂を孕んだ自己イメージに持つようになることがあります。例えば、社会交流システムが働いているときは、周りに優しく、世話役になり、驚かしたり、笑わしたりするので、みんなに好かれています。一方で、過覚醒のときは、問題行動を起こすので、嫌われてしまったり、低覚醒のときは、無表情なので、不気味がられたりします。そのため、人間関係が不安定になり、ことごとく失敗していけば、自信を無くして、自己否定感が強まります。また、本当の自己は、不幸な生い立ちにより、無力感に打ちのめされたとか、心は暗く救いようがないので、強いふりをしたり、明るいふりしたり、まともな人間のふりをしたりと偽りの自己を育てます。さらに、長年に渡るトラウマの犠牲者は、恐怖や痛みを感じなくしていきますが、それと同時に、自己認識や身体イメージが喪失していくことがあります。

⑩身体症状

子どもの頃からの長年にわたるストレスは、身体を過緊張状態にして、視床下部、下垂体、副腎(HPA軸)からストレスホルモンを過剰に分泌させるので、脳や体に慢性的な炎症を引き起こします。そして、大人になってからの健康状態に影響を与えて、具体的には、心臓病、がん、自己免疫疾患、線維筋痛症、過敏性腸症候群、うつ病など生活全般を一変する病気に罹りやすくなります。また、トラウマを受けることで、自律神経系の働きが乱れて、気管支や消化器の働きが異常になり、様々な体調不良を起こします。例えば、危機的状況が長引くと、交感神経系の働きが過剰になって、体は過度に緊張し、興奮しやすく、呼吸は浅く早く、動悸は激しく、全身が熱くなり、発汗が見られて、パニックや過呼吸を起こします。また、戦うことも逃げることもできない状況に追い詰められると背側迷走神経が働くため、胸が苦しく、息もしづらく、死んだように身動きが取れなくなります。さらに、危機的状況が長引くことで、人は息をひそめて、身体を収縮させていき、肩や首は固まり、みぞおち辺りに大きな塊が出来て、胸や胃腸が締めつけられる痛みが出るかもしれません。また、手足は鉛のように重たくなるか、力が入らなくなり、冷たくなっていくかもしれません。自律神経系や免疫系の調整がうまく働かなくなると、たとえストレス要因が無くなってもすぐに元のリラックスした状態には戻れなくなります。そして、身体の麻痺とか、身体に全く力が入らず倒れてしまうとか、椅子から立ち上がれないとか、原因不明の疼痛、喘息、頭痛、吐き気、めまい、過呼吸、吃音、食欲不振、過食、便秘、下痢など様々な身体症状が現れます。身体が限界の状況にあるときは、熱かったり、冷たかったりしますが、限界を超えてしまうと、全身は固く、冷たくなり、体温調整ができず、夏なのにジャンパーを着たりするようになります。

 

⑪強迫観念

過剰な警戒心から、身体は緊張しており、人の目を気にしています。人前では、自分の不安要素がバレないように、完全主義で自分の安全を保障しています。また、感情や自己調整機能に調整不全があり、モヤモヤ感やイライラ感があって、その場にいられないとか、自分で自分を保つことが難しいときがあります。さらに、危険があるかどうか、安全かどうかが細かいところまで気にして、自分が人を傷つけてしまう不安や人から傷つけられることを恐れています。このような自己の不全感から、思考や行動をコントロールしようとして、強迫観念や強迫行為に陥りやすいです。また、自分が正しいということに固執していき、不快なエピソードや不確実性に耐えることが難しいです。

 

嗜癖(依存症)

ストレスに長年に曝されるとセロトニンが不足していき、好きだったことに対する興味や意欲が無くなり人をうつ状態にします。その一方で、今の苦痛を麻痺させ、自分を快適にしてくれるものとか、生き生きとした気分になれることに対して、異常なまでにのめり込んでいくため、薬物やアルコール、過食、買い物、ギャンブル、セックスなどの依存症に陥りやすく、周りの人を巻き込みがちです。常に周囲を警戒して過覚醒の人は、自分を落ち着かせようとして、過食やアルコール、セックス、電話、チャットに依存して、覚醒水準を下げます。身体が麻痺して低覚醒の人は、薬物や自傷行為、興奮をもたらすような行為にはまります。

 

⑬空想傾向

変えようのない家族や学校生活に絶望して、無意識のうちに、本当の親を探したり、自分をもらってくれる新しい家族と巡り会うといった空想に耽る傾向があります。早期トラウマを受けた子どもは、現実逃避の世界に膨大な時間を費やすことがあります。大人になる過程において、学業や部活、仕事で忙しくなるため、空想に費やす時間は減っていきます。

 

⑭極端に混乱した思考

フラッシュバックや悪夢に襲われ、生き地獄のような世界を生きており、善か悪か、白か黒かといった極端な思考になりがちです。また、過去のトラウマによって凍りついた思考・感情・欲求がフラッシュバックとして何十回も蘇ってくるため、今ここでの思考・感情と過去の思考・感情の区別ができず、混乱していきます。例えば、物音ひとつで被害妄想が拡大していったり、自分とは正反対の欲望に取り憑かれて、それこそが自分の欲望ではないのかと倒錯的になることが起きます。

 

⑮意味体系の変化

恐怖やフラッシュバック、情動のコントロールできなさ、身体の痛みなどのトラウマにより、打ちのめされて無力化されられています。また、自分では変えようがなく、どうしようもない不幸を呪っていて、生きていくことに希望を見い出せず、絶望感だけがあり、自分を支えてくれていた信念が喪失しています。そして、瞳は凍りついたまま、代わりとなるモノに執着していき、こだわるようになり、そのモノに尊厳を見い出します。

 

⑯集団生活が苦手

枠組みのなかで生活していくことが苦手です。学校の行事で、皆と同じことをさせらる場面では、じっとしていられなくなります。規則やルールにより、じっとさせられている場面や従わさせられる場面では、過去の身動きが取れなかったときのトラウマが思い出され、神経が痛み、心身に不快感が出ます。学校に行くのが嫌になり、地獄になります。

 

⑰変化を妨げる暗黒面

凍りつきや不動化のトラウマを持っている子どもが、家庭や学校のなかで、長期に渡ってストレスに曝され続けると、社会や集団に反発する破壊的な暗黒面が大きくなることがあります。傷つきやすい心と身体が、戦慄や恐怖により、全身が委縮させられるとき、さらに収縮してしまうと、呼吸ができず、心臓が止まりかねないので、脳が生命を維持しようします。生命を維持しようとする力は、このように肯定的な面もありますが、傷ついた人をその場に留めてしまって、変化を妨げるという暗黒面もあります。そして、良くなることや変わろうとすることに対しても、反発するようになります。不条理な目に遭わされ、影の暗黒面が強くなると、捕食者側になり、暴力や暴言を吐いて、他人を攻撃する人になってしまいます。

 

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