自己愛のチェック

▶自己愛的な性格傾向を持つ原因

 

自己愛は、自分を愛することとか、自分に対してすごい、素晴らしいという感覚であり、誰でも持っていますが、自己愛が強いと病気と見なされます。健康的な自己愛とは、自分のことを大切に思えたり、自分のことを価値があるように思うことです。

 

乳児期から児童期にかけて、虐待等を受けて育つと生存本能を司る脳幹や大脳辺縁系は、通常の人とは違った形で成長していきます。扁桃体は、闘争・逃走反応を引き起こし、目の前にあるものが敵か味方かを判断していくようになるため、子どもは近づく、離れる、攻撃する等の自分の意思に基づかない行動に支配されていき、その後の人生に影響を残します。

 

不幸な生い立ちの子どもは、自分の幸せな思い出を語るだけの経験がないので、無意識のうちに、作り話をしていたりします。同じクラスの子どもとの会話は、自分の変えようのない不幸を思い出す言葉や文章が様々に散らばっていて、躓いたり、傷ついたりしていきます。そして、絶望や悲しみ、怒りを感じますが、空想の中だけは自分を守る唯一の場所となり、自分は何でもできるんだとか、凄いんだと思い込むようになります。さらに、本人は不幸を避けようしたり、認められようとして努力していくので、自分は凄くて、平凡な周りの人を見下すようになり、妄想と現実との区別がつかなくなることがあります。また、現実は自分のことをいつも評価してもらえず、家庭や学校でストレスが続くと、それに応じた闘争や逃避などの覚醒状態となり、自己中心性、自己没頭、不寛容などの性格傾向を持つようになります。そして、虚栄心が強く、貪欲で、他者をコントロールして、慢心し、思いやりのない人間に育ちます。大人の振る舞いをして、見栄え良くみせている裏では、子どもの頃に固着した情緒障害児の姿があります。

 

▶自己愛性パーソナリティ障害の診断基準(DSM-5)

 

(1)自分が重要であるという誇大な感覚(例:業績や才能を誇張する、十分な業績がないにもかかわらず優れていると認められることを期待する)

(2)限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想的な愛の空想にとらわれている。

(3)自分が ”特別” であり、独特であり、他の特別なまたは地位の高い人達(または団体)だけ理解しうる、または関係があるべきだ、と信じている。

(4)過剰な賛美を求める。

(5)特権意識(つまり、特別有利な取り計らい、または自分が期待すれば相手が自動的に従うことを理由もなく期待する)。

(6)対人関係で相手を不当に利用する(すなわち、自分自身の目的を達成するために他人を利用する)。

(7)共感の欠如:他人の気持ちおよび欲求を認識しようとしない、またはそれに気づこうとしない。

(8)しばしば他人に嫉妬する、または他人が自分に嫉妬していると思い込む。

(9)尊大で傲慢な行動、または態度。

(以上のうち五つ、またはそれ以上によって示される)

 

▶自己愛度チェックの27項目

 

自己愛性パーソナリティ障害の人は、人との関係の取り方に問題があります。本当の自分は、空虚で希薄で、ダメな自分とすごい自分が両極にいます。そして、どちらかというと、覚醒度が高くて、すごい自分の方が日常生活の大部分を担っています。対象を求める質が病的で、行動が極端になるため、不適応に陥りやすいです。

 

①子どもの頃のトラウマにより無垢な子どもの部分は無力化されていて、生活全般の困難から諦めるように条件付けられています。一方で、誇大化した自己は、傲慢で妄想的で誰かから奪うことを欲しています。この2つの自己像に分裂しており、自己調整機能や覚醒度のコントロールの仕方が不安定です。

②爬虫類には有効であった太古的防衛操作の中に全身すっかり汚染されています。

③自分の境界線はしっかり守りますが、他者の境界線を侵害して、無意識のうちに自分が有利な構造を作り出します。

④自己愛性パーソナリティ障害は、境界性パーソナリティ障害と人格構造の水準は似ていますが、自己の構造は比較的安定しています。

⑤親子間とか学校社会から非常に抑圧されてきた暗い過去があり、変えようのない悲しみとか、自分なんて何をやってもダメとか、無力感、孤独感、怒り、つまらなさ、満たされない気持ちを抱えています。

⑥ストレスホルモンが高くサバイバル状態で、自分と他人と比較して勝ち負けにこだわります。現代の競争社会には適応しやすい面もありますが、他方で、危険を察知したときに、表情がガラリと変わり、闘争・逃走モードに入りやすいので、過緊張や短気で怒鳴るなどしてしまい不適応になりがちです。

⑦覚醒度の高さから、理性よりも本能や身体性の働きが活発で、自分や他者の精神状態を十分に読み取ったり受け取ったりすることが苦手であり、不寛容、自己中心的思考、自己没頭的、操作的です。

注意の面に問題があり、同時に複数の視点を抱えることが難しい状態にあります。

⑨否定されたり、恥をかかされると、憤怒や固まるなどしてうまく情報処理することができません。この破綻恐怖の防衛として、周囲の評価に過敏で、完璧さを求めて、強迫観念と強迫行動に陥りがちです。

⑩幼い頃からの不幸を回避しようとして、先手を打って自分の安全な環境を作ろうとします。また、自分は賞賛されるべきと思っているので、周りをコントロールしたり、自分の見栄えを気にしたりします。

⑪舌のよく回る巧みな人物であり、議論好きで、嘘をついてまで人を騙し、恫喝、説得、早口、威嚇、脅して相手を縛り付けます。

⑫自動車を運転中、他の自動車の割り込みに対して激怒したり、仕返したりします。

⑬自己中心的で常識外れの行動を取り、悪質クレーマーで、ウェイターのサービスが悪かったり、待たされたりするような些細な問題であってもすぐに腹を立て、他人を攻撃してしまいます。

⑭見た目重視で美しく若い女性が大好きです。恋人にダイエットを強要したり、浮気することに罪悪感がなかったり、言葉巧みにたくさんの女性と交流し、ロマンティックな気分を味わいます。

⑮過去の恋人の写真をいつまでも残していて、周りに見せたり、若い頃の武勇伝を話すことが好きです。

⑯捕食する側にいる自己愛性パーソナリティ障害の人は、若いうちは周りをコントロールすることに長けているので社会的に成功者となりやすいです。その一方で、中年期特有の危機に陥ることがあります。

⑰自我と無意識の欲求との境界が開放されており、理性の働かすよりも、不快を避けて快を求める快楽原則に支配されています。

自己愛性パーソナリティ障害の人のなかには、生まれ持った資質の弱さや軽度の発達障害の傾向を持つ人がいます。

⑲幼少期のトラウマは、一瞬にしてその人をバラバラにして力を奪い取りますが、今も意識や認識過程の視野が狭く、こころが成長しきれず、まとまりのない状態にあります。

⑳親子間のこじれから、ぐれて非行や家出に走ったり、頻繁な転居の経験があったり、子どもの頃に愛着基地が剥奪されていたり、自己存在感が希薄で帰るべきホームがありません。通常の人に比べて、所有の概念が薄く、どこでも生活できる代わりに自他の境界があいまいです。

子どもの頃から、家庭が貧しかったり、お母さんが家出していたり、父親から暴力をふるわれる母親の姿をみていたり、不幸な生い立ちの人が多いです。

自分が傷つかないために他人の顔色や気持ちに過敏に反応し、警戒した状態で過ごしています。

㉓仕事がうまくいかない場合は、自分の万能感が満たさず、周りをコントロールできないので、欲求不満になり、職場を転々としがちです。

㉔本当は何をしていいのかわからず、ぼんやりとしたなかで生きており、こころは空虚で、その場その場で生きています。

㉕自分が生きているのか死んでいるのかわからず、寂しさとか自分の加害性には無自覚です。その一方で、力を求め、スリルを味わうことで自分の生きている感覚を取り戻します。

㉖一人の時間が耐えられず、取り巻きと行動します。周りには、無能なイエスマンを置いたり、足がわりに使おうとします。

㉗子どもの頃から、プライドが高く、極度に傷つきやすいので、自分を守るために、攻撃性を身につけていきます。