目次
7.自己愛の完全主義
10.自己愛からターゲットに
11.自己愛と言い争うこと
12.自己愛の負の感情の大きさ
13.自己愛と接する事の注意点
14.自己愛から逃げる勇気
15.自己愛性人格障害への対処
16.自己愛性人格障害の克服
17.自己愛と仲良くなる方法
18.その他
19.瞑想による神秘体験の変容
自己愛性パーソナリティ障害(自己愛性人格障害)を抱える人々は、心の中に深いトラウマというハンディキャップを抱えており、実際には無力さを併せ持っているため、自分自身をありのままの姿で受け入れることができません。彼らは自らの弱さを隠すために仮面をかぶり、偽りの姿で生きています。このような病的な自己愛は、過去のトラウマや神経発達の影響により、自分のことばかり考えがちになり、周囲のことを顧みることが難しくなります。少しでも優位に立ち、物事を自分の思い通りに進めようとする強い欲求が彼らの行動を支配しています。
自己愛性パーソナリティ障害を持つ人は、他者よりも優位に立っていないと不安を感じ、落ち着くことができません。結果として、その場に居続けることが難しくなり、常に自分を脅かす要因を排除し、予期せぬ事態を避けることで、トラウマから自分を守ろうとします。
また、彼らは世界に対して強い不信感を抱いており、安心感を十分に育むことができていません。そのため、自己の存在感が希薄で、日々の生活も一貫性に欠けることが多く、利己的で共感性に乏しい傾向があります。相手の視線や反応には敏感ですが、相手の内面にまで思いを馳せることができず、相手の立場に立って物事を考えることが困難です。その結果、関わる相手は利用され、用が済むと捨てられてしまうかもしれません。
自己愛性パーソナリティ障害を持つ人は、基本的に自分自身が最優先で、自分の快感や楽しみを追求する傾向が強く、他者を利用して自分の地位を高めようとします。無力な自分を見せることを極度に恐れ、常に警戒心を抱いており、人前での失敗や恥をかくことに対して強い恐怖感を持っています。そのため、他者から良く思われることに固執し、自分を素晴らしい存在として見てもらうために、絶えず賞賛を求め、相手の顔色を伺うことが多いです。
さらに、彼らは他者に対して病的なまでに高い期待を抱き、自分の誇大な理想を投影して、相手に完璧さを求めます。しかし、その理想が崩れたり、思い通りにいかないことが起こると、すぐに苛立ち、その原因を相手に押し付けることがあります。予測不能な状況や、自分の思い通りに進まない事態に直面すると、細部にまで神経を尖らせ、その結果、関わる人々を疲弊させることも少なくありません。
また、彼らは強い者には媚びを売り、表面上は猫をかぶって従順な態度をとりますが、弱い者に対しては、怒りをぶつけたり、コントロールしようとする傾向があります。こうして、自分の万能感を維持し、誇大な自己像を守り続けようとします。このような行動パターンは、周囲の人々に大きな負担をかけ、結果的に人間関係を壊してしまうことが多いのです。
自己愛性パーソナリティ障害からの回復には、まずは平穏な日常を送ることが重要です。特に社会人にとっては、仕事の激務や重い責任から解放されることで、心に余裕が生まれます。こうした余裕が、自己愛性パーソナリティ障害の特徴である攻撃的な性格を和らげ、より穏やかな性格へと導いていくでしょう。社会の中で自分のペースで成功を収め、安定した生活を築くことが、回復への大きな一歩となります。
1)自己愛と恋愛すると
自己愛性パーソナリティ障害を持つ人々は、居場所のなさや深い寂しさに耐えることが難しいため、二つのタイプに分かれることが多いです。一つは、秘密を抱え、平気で浮気をするタイプ。もう一つは、特定の相手に強く執着するタイプです。彼らは狡猾であり、平気で嘘をつくことができ、その行動に対する罪悪感や罪の意識がほとんどありません。
恋愛において、彼らは相手の期待や幻想を先回りして読み取り、それを全面的に肯定することで、相手を喜ばせようとします。このため、相手の懐に入り込むのが非常に上手です。彼らの魅力的な振る舞いは、まるで相手の望みをすべて叶えてくれるかのように見えますが、実際には自己中心的な動機がその背後に隠れています。これにより、彼らは容易に相手の心を掴む一方で、関係が深まるにつれてその本質が徐々に露わになり、相手にとっては困難な状況を生むことが多いのです。
自己愛性パーソナリティ障害を持つ男性は、初対面では非常に好印象を与えることが多いです。彼らは、自分が優位に立つために、紳士的で誠実そうな態度を装い、最初のうちは関係が良好に進展します。しかし、恋人との関係が深まるにつれて、不満や不快感が表面化してくると、次第にその態度が変わっていきます。
彼らは、自分の期待通りに相手が行動しないことに対して、腹を立てたり、怒鳴ったりすることが増えます。価値観の不一致が顕著になると、最初に築き上げた幻想が崩れ始め、冷たく接したり、あら探しをしたりして、攻撃的な言動が目立つようになります。
また、自己愛性パーソナリティ障害の男性は、恋愛において外見を非常に重視します。相手が自分の理想的な美しさを持っていないと受け入れられず、見た目に強いこだわりを持っています。彼らは、セックスにおいても特定のシチュエーションで自分の気持ちを高め、活力を得ようとしますが、それもまた相手をコントロールする一環です。
さらに、彼らは表と裏の顔を巧みに使い分け、相手に見返りを求めながら、あたかも共感しているかのように振る舞いますが、実際には他者を本当に愛することができません。複数の相手と関係を持ち、常に自分が有利な立場にいるように努めながら、相手を支配下に置き、人間関係をコントロールしようとします。このような関係の中で、相手は次第に疲弊し、傷つくことが多いのです。
自己愛性パーソナリティ障害を持つ男性は、自分の誇大な自己像を保つために、相手をまるでモノのように扱いがちで、相手を傷つけても罪悪感を感じることがほとんどありません。彼らは恋愛のパートナーに対して、完璧さを求め、自分の思い通りに動いて欲しいという強い願望を抱いています。良い相手を連れ歩くことで、自分の価値を確認し、満足感を得ようとします。
また、彼らはパートナーと自分を比較し、自分が優位に立つことで安心感を得ます。こうした比較と優位性の追求は、関係を支配と服従の関係に陥れやすく、結果としてパートナーは不幸になることが多いです。自己愛性パーソナリティ障害の男性との関係は、相手にとって非常に消耗するものであり、長期的には大きな心の負担を伴うことになります。
2)自己愛と結婚すると
自己愛性パーソナリティ障害を持つ夫は、理想的な家族像に強い幻想を抱いており、その理想を実現するために、妻や子供を道具やアクセサリーのように扱うことがあります。彼らは、自分の価値を高めたいという欲求から、職場や社会活動に熱心に取り組み、外では良い顔をして成果を上げようと努めます。
彼らは、不安や警戒心が強いため、物事を先読みして行動する傾向があり、特に子どもやマイホームに対して強いこだわりを持っています。すべてを自分の計画通りに進めたいと考える一方で、言いようのない不安感が常に心の中にあります。
さらに、仕事の量や経済状況、家事、育児、健康などの問題で不満が高まり、ストレスが溜まると、その不満が妻に向かうことがよくあります。結果として、妻のあら探しを始め、相手を馬鹿にするような発言をしてしまうことが多く、家庭内の関係が悪化する原因となります。このような状況は、家族全体にとって大きな負担となり、特に妻にとっては精神的に非常に苦しいものとなるでしょう。
家の中では、自己愛性パーソナリティ障害を持つ夫は、不快に感じることが多く、強迫的な行動が家族に影響を与えることが少なくありません。彼には多くの独自の「マイルール」があり、それらが守られないと強いストレスを感じます。その結果、妻はこれらのルールに従うように強いられ、家庭内の緊張が高まります。また、夫は家庭内の細かいルールにまでこだわりがあり、家事や育児が自分の基準に達していないと、妻に対してイライラを募らせることがよくあります。
中年期に差し掛かると、夫は人生の停滞感や身体の不調を感じやすくなり、その不安や苛立ちを長時間の説教や自己中心的な話、あるいは無視や威圧的な態度で表現することが増えます。これにより、結婚生活が続くにつれて、夫は妻への共感や愛情を失い、一人の人間として尊重しなくなる可能性があります。
家の中では、できるだけ何もしようとせず、自分が快適でいられることが最優先となり、好き勝手な行動を取るようになります。もし妻や子どもから自分が必要とされていないと感じると、外で遊び始めたり、不倫に走ったりすることがあります。また、家庭内で感情をぶつけることができないときは、お酒に逃げたり、遊び相手を探したりして、別の依存先を求めることもあります。
さらに、夫はお金の管理に厳しく、自分のためには惜しみなく使いますが、パートナーが使うお金は無駄と感じ、細かくチェックします。このような行動は、家庭内にさらなる緊張を生み、妻や家族にとって精神的な負担となります。
自己愛性パーソナリティ障害を持つ妻は、子供をまるで道具やアクセサリーのように扱うことがあります。彼女はキャリアを追求し、女性として輝きたいと強く望んでいますが、その期待が思うように叶わないと、その鬱憤を子供に向けて晴らすことがしばしば見られます。このような妻は、外では善人を装い、他者には親切に振る舞い、注目されることや賞賛を得ることを生きがいとしています。
自己愛性パーソナリティ障害を持つパートナーと生活する人は、ハラスメント行為を受けながらも、これまで一生懸命に努力してきたため、関係を断ち切ることができず、共依存に陥ることがあります。相手のどうしようもない言動に途方に暮れ、こんな人と一緒に生きてきた、あるいはこれからも生きていかなければならないという現実に絶望感を抱くことが多いです。共依存の関係は、相手に対する苛立ちや絶望感を深める一方で、自分自身をも苦しめる原因となります。
3)DVやモラハラの影響
自己愛性パーソナリティ障害を持つ人々は、過去に酷い目に遭った経験から、二度と同じような状況に陥りたくないという強い恐れを抱いており、常に警戒心を持ちながら生活しています。彼らは自分の心を守るために厳しい境界線を設定し、周囲の人々の反応に敏感です。仕事が激務で疲労が溜まると、さらに強迫的な行動が増え、その分だけストレスも蓄積されます。その結果、身近な家族に対して苛立ちや怒りをぶつけてしまうことがしばしばあります。
自己愛性パーソナリティ障害の人々は、怒りを通じて相手を自分の思い通りに動かそうとする傾向があり、家族はその怒りを避けるために言うことを聞いてしまうという悪循環に陥ります。このような状況が家庭内で続くと、DVやモラルハラスメントが常態化し、パートナーにとって家庭が安らぎの場ではなく、責められ罵られる場へと変わってしまいます。これにより、パートナーは精神的にも肉体的にも次第に疲労し、うつや不眠、めまい、頭痛、腹痛、吐き気などの身体的な症状が現れることもあります。
この悪循環を断ち切り、DVやモラルハラスメントを減らすためには、自己愛性パーソナリティ障害を持つ人が怒ったとしても、その怒りに屈せず、思い通りに動かないようにすることが重要です。相手に合わせて我慢するのではなく、毅然とした態度で抵抗し、怒っても何の利益も得られないこと、むしろ怒ることで損をするという関係性を築いていくことが大切です。
4)身体と怒りのメカニズム
自己愛性パーソナリティ障害を持つ人は、日常生活全般において強いストレスや緊張を感じており、身体がリラックスすることが難しい状態にあります。嫌悪するものに対しては特に敏感で、身体が過剰に反応し、強い不快感を覚えることが多く、傷つきやすいメンタルを抱えています。これは一般的に、トラウマの影響によって副交感神経の働きが弱く、安心感が十分に育っていないことに起因しています。幼少期から常にサバイバルモードで生きてきたため、他者から拒絶されたり否定されたりすると、強い精神的苦痛を感じ、瞬時に怒りを爆発させることがあります。この怒りは通常よりも沸点が低く、一度沸騰すると収まるまでに時間がかかります。
そのため、彼らは過剰な警戒心を持ち、新しい変化に対して恐れを抱きやすい一方で、自分を無条件に受け入れてくれる安全な空間を切望しています。しかし、安心感や安全感を求めるあまり、周囲の人々を巻き込んでしまい、その結果、人間関係がぎくしゃくしやすくなります。
家庭内では、自己愛性パーソナリティ障害を持つ人がパートナーに対して「自分を大切にしてくれていない」と感じたり、自分の期待に応えてくれないことが大きな脅威と捉えます。彼らは日常的に多くのことに不快感を抱えており、自分が脅かされたり、予期しない出来事が起こると、身体に戦慄のような衝撃が走り、筋肉が硬直し、怒りが一気に沸き上がります。このとき、身体は交感神経が過剰に働き、緊張状態に陥り、頭には血が上り、怒りの感情に支配されます。彼らはこの脅威を遠ざけようとする防衛本能が働き、無意識のうちに自己主張を強め、マウントを取ろうとする態度を取ったり、自己愛憤怒を爆発させて周囲を圧倒しようとします。こうした行動は、彼ら自身が抱える過剰な不安や緊張を解消しようとする試みですが、結果的に周囲との関係をさらに悪化させる原因となることが多いです。
自己愛性パーソナリティ障害を持つ人は、辛い気持ちに直面すると、自分でどう対処すればよいかわからなくなることがあります。苦痛から激怒に至る場面では、怒りの感情をうまく処理できず、後先を考えずにその怒りを相手にぶつけてしまいます。怒りに任せて振る舞い、相手を罵り、正論を振りかざすことで、身体の中に溜まった爆発的なエネルギーを放出し、自分自身を楽にしようとします。
一方で、恐怖や戦慄を感じると、怒りの感情に支配されないように、先手を打って人を操作し、周りを自分の思い通りに動かそうとします。このような身体のメカニズムによって、パートナーはDVやモラルハラスメントを受けることがしばしばあります。
この関係性を変えていくためには、パートナー側がこれまでに溜まった感情を一度リセットする必要があります。先に述べたように、自己愛性パーソナリティ障害を持つ人が怒りを爆発させても、それが得にならないような関係性を築くことが重要です。二人の間に強まる緊張感や、互いを脅かし合う無意識の表情や言葉、態度を自覚することが第一歩です。
自己愛性パーソナリティ障害を持つ人は、自分の怒りのメカニズムを理解し、身体の痛みや不確実性に耐える訓練を行うことが求められます。感情のままに行動するのではなく、自分の不適応な行動パターンを意識しながら日々を過ごすことが大切です。また、相手を巻き込むことを避けるため、強迫観念と向き合い、自分と他者の境界をしっかりと区別することが必要です。こうした取り組みを通じて、より健全な関係性を築くことが可能になるでしょう。
5)自己愛の行動パターン
自己愛性パーソナリティ障害を持つ人は、身近な人の存在を感じると、警戒心が高まり、身体が緊張し、頭の中でその人をアセスメント(評価)することが多いです。相手に対して嫌悪感を抱くと、筋肉が硬直し、痛みや不快感などの強い生理的反応が生じます。このような身体的な反応があるため、通常の生活で必要なストレス耐性が弱く、不安や焦燥感に駆られやすくなり、その結果、衝動的に快楽を求めたり、怒りを爆発させたりすることがあります。最悪の場合、自分の感情をコントロールできなくなり、自分自身の存在を感じられなくなることもあります。
彼らは、一緒にいる人から大切にされていない、または必要とされていないと感じると、強い不快感に襲われ、身体がストレスホルモンで満たされます。この状態になると、闘争モードに入ったり、激しい苦痛を感じたり、投げやりな態度を取ったり、あるいは自分の内面世界に閉じこもってしまうことがあります。さらに、不快な環境に長く留まると、気分が落ち込み、無力感や絶望感に陥りやすくなります。
普段から、彼らは自分を元気にするために、非日常的な空間に没頭し、楽しさを求めて行動することが大好きです。自己愛性パーソナリティ障害を持つ人がパートナーに求めるのは、お互いを高め合える関係や、価値観の一致、そして穏やかな時間です。パートナーは、彼らが不快な状況に長時間耐えられないことを理解し、そうした環境に長期間留まらせないよう配慮することが大切です。彼らの心理的な負担を軽減するために、共感と理解を持って接することが、良好な関係を築く鍵となります。
6)自己愛の思考パターン
自己愛性パーソナリティ障害の人は、身体の中にトラウマの過剰なエネルギーを閉じこめているために、不快すぎる状況が続くと、じっとしていられなくなり、ソワソワ、モヤモヤなど焦燥感に駆られて、動きたくなります。そして、戦うことも逃げることもできない場面になると、胸が苦しくなり、眉間にしわがより、手足は冷え、苛立ち、パニック、考えがまとまらない、凍りつきが起きます。身体が凍りついてしまうと、頭の中が緊急事態モードになり、ネガティブな考えがグルグル回ります。
彼らは、ストレスのかかる場面では、何かが差し迫ってくるような圧迫感があり、きつくなるため、その場その場で最適な解決方法を考えたり、自分に都合の良い筋道を作り出したりすることに長けています。そして、頭の中は、自分を論理で正当化し、いつも自分の言い分は正しく、自分の正論に固執します。人生上で失敗することがあっても、いつも誰かのせいにして終わります。
このような特性があるため、病的な自己愛が強い人ほど、不快な状況を避けるために、先手先手を打ち、その場その場で考えて、自分の主張を一方的に押し切ることで、問題を解決しようとします。彼らは、問題解決能力に長けているので、自分はすごいと思い上がって、相手を見下したり、うまくいかないことがあれば、全部他人のせいにして、自分は悪くないと自己肯定します。
7)自己愛の完全主義
自己愛性パーソナリティ障害の人は、身体の中に痛みが刻み込まれているために、1歩間違えると、無力な自分に陥ってしまいます。そのため、用心深くなり、完全主義の潔癖症で、神経質な性格です。生活空間の中で、物の置き場所や家具の配置、戸締り、ほこり、菌、ウィルス、鋭利な物など、非常に細かいところまで気にして、完璧にしていないと不安になり、落ち着かなくなって、苛立ちが出ます。また、パートナーの見た目の形、髪型、目の形、眉の形など綺麗でないと受け入れられません。さらに、表情、スタイル、服装、仕草など細かいところまで見ていて、美醜にこだわります。
彼らは、自分とセンスが合うかどうか、価値観が合うかどうかを考えて、付き合い続けるに値するか判断しています。また、悪いものや不確実性なものを受け入れづらく、常に安全・安心、実益を求めており、損得勘定や目的に沿って動きます。パートナーには笑顔や穏やかでいることを強要して、いいつけやルール通りにコンピュータのように動いてもらいたいと思っています。
8)自他の区別の無さと集団性
自己愛性パーソナリティ障害の人は、自分の身体に安心感がなく、相手の感情がもろに入ってきたりします。そのため、自他の区別があまりなく、相手も自分と同じような考え方をしていると思うと安心になり、相手が自分と価値観が違うと痛みになります。そして、相手を自分の思い通りに動かすことに快感を得て、周りを巻き込んで気分を紛らわします。また、自分とは違う他者に合わせていくことがきついので、自分がリーダーになって集団を仕切ろうとします。
基本的に、集団場面では、周りに期待されていると感じて、話術を駆使し、その場の盛り上げ役になります。人によっては、自己中心的で自分の話したい事ばかりを話して、自分より下の者をおくことで、自分の価値を高めます。一方、すっきりしたコミュニケーションをしたいため、その場を盛り下げる奴や空気を読めない奴、自分に敵対してくる奴が嫌いです。リーダーになっているときは、生き生きとしていますが、脇役のときは、そんな自分を受け入れられず、オドオドして小さくなります。
彼らは、集団を自分の手足のように動かそうとして、先手を打ち、巧みな会話をして、自分の価値に沿わない者には敵意を持ちます。また、敵対グループを作り、仲間で団結して、仲間意識や絆意識をアピールして、リーダーになっていきます。一方、自分は素晴らしいという誇大妄想を持っているため、チームプレーが苦手な場合も多く、外から見れば、自己中心的な行動に見えます。
9)相手を鏡のように使う
自己愛性パーソナリティ障害を持つ人は、本来危険ではないものを脅威と感じやすく、また自己の存在感が希薄なため、相手をまるで鏡のようにして自分を映し出します。相手が優しく笑顔で共感的に接すると、彼らの心は次第に楽になり、穏やかに過ごせるようになります。また、相手が彼らを誉めると、自信が深まり、非常に喜びます。
しかし、相手が強気に出ると、彼らはそれを脅威と感じ、攻撃されたと受け取ります。また、相手が彼らを嫌うと、彼らもその感情を返し、トラウマを植え付けようとすることがあります。一方で、相手が弱みを見せると、彼らも強がる必要がなくなり、等身大の自分を見せるようになることがあります。
自己愛性パーソナリティ障害を持つ人が成長するためには、この等身大の自分を育てていくことが重要です。過度に攻撃的な反応や強がりを抑え、ありのままの自分を受け入れることが、彼らにとっての成長の鍵となります。相手との相互作用を通じて、自分を映し出す鏡としてではなく、自己を育てる土壌として周囲の人々を見られるようになることが、彼らにとっての真の成長を促すでしょう。
10)自己愛からターゲットに
自己愛性パーソナリティ障害の人は、理想化された対象との幻想的な一体感を求めており、それが叶わないと、胸が苦しくなり、無力化して、自分自身を保てなくなる不安があります。そのため、理想化された対象をめぐるポジション争いでは、先回りして、先手を打ち、負けないように頑張り、周りをコントロールしようとします。
彼らは、競争社会の中で、自分が不利になると、敵を作って、ライバル視します。自分が脅かされる状況において、ずっと考え事をして、ライバルのイメージを下げるために、ネガティブな要素を植え付け、批判し、マウンティングを取ってきます。ターゲットにされた方は、細かいミスまで指摘されたり、仕事のミスを大勢の前で注意されたり、事実とは異なった情報を流されたり、しつこく付き纏われたりして、ろくなことがありません。彼らのターゲットになる方は、虐待やいじめ、パワーハラスメント、モラルハラスメント、セクシャルハラスメント、アカデミックハラメントを受けることになり、精神的に追い詰められていきます。
そして、自己愛のターゲットにされた被害者は、無表情になり、うつや不眠、情緒不安定、体調不良、対人恐怖、解離などの症状を呈して、生きる屍のような状態になることもあります。また、なかなか誰にも相談できず、解決の糸口が見つからないまま、不幸な運命を辿りがちです。彼らのターゲットにされた場合は、必要以上に関わらないようにして、身近な存在から遠く離れた存在になりましょう。また、自分の境界を高く設定して自分を守るか、無視し続けるか、八方塞がりな状況にいるなら逃げたほうがいいです。
11)自己愛と言い争うこと
自己愛性パーソナリティ障害の人とは、言い争うことを避けた方が無難です。その人が間違っていることを証明したくても、相手は防衛的で議論的であるため、話がこじれる可能性が高く、関係が悪化してしまうことがあります。彼らが防衛的で議論的なのは、子どもの頃から、過酷な環境で育っており、間違った親のもとで厳しい躾を受け、押さえつけられるような体験をしてきました。そのため、彼らは、支配されることを恐れており、生き延びるためには、彼らなりの正論があります。
彼らは、通常の人たちよりも、相手の悪い面に耐えれなく、感情の浮き沈みがあり、猜疑的で細かいところまで気にしているのが特徴です。また、話し相手の矛盾を突くのが得意で、自分の主張を振りかざし、正論を押し通そうとして多弁になり、早口です。話し相手が、自分のことを大切にしていると気持ちが良くなります。しかし、話し相手が自分を必要としないとイライラします。また、相手が自分を批判しているように感じて、自分を脅かす存在に見えてしまうと、そのまま目つきが変わる過覚醒の闘争スイッチが入ります。
自分が不利な立場になり、闘争モードに入ると、相手の言ったことに反発し、マウントを取ってきて怒ります。彼らは、物事を白黒はっきりさせないと気が済まないため、とことんまで議論して、相手の間違いを指摘してきます。その結果、自己愛性パーソナリティ障害の人と言い争う場合は、実りのある議論にならないばかりか、人格否定されて、おまけに彼らの中身の薄っぺらさや、感情の欠落に気づくことになり、時間を無駄にします。酷い場合には、威圧的な態度を取り、一晩中説教され続けることもあります。
12)会社組織の中では
子ども時代に家庭内で感じていたことを、会社組織の中でも同じことを繰り返します。自己愛性パーソナリティ障害の人は、向上心が高く、キャリアアップを望んで、合理的な思考のもと活動します。仕事や人間関係がうまくいって、周りをコントロールできているときは、有能感を持ち、調子が良くなります。闘争心が強い人ほど、自分の思う通りに動かすことに長けていて、実績や結果を残します。仕事では、あらゆる想定をして、こういうケースではこうしようとか、様々なプランを立てます。仕事で責任やプレッシャーを抱えて、追いつめられながらも、与えられた課題を解決していき、役職を任されるようになり、責任ある立場につくかたも多いです。
一方、調子に乗っていくうちに、仕事が手に負えなくなると、気分が落ち込みます。また、仕事に一生懸命取り組み、細かいところまで見ることができますが、段々と周囲の人間との間に軋轢が生じて、仕事を辞めてしまうことがあります。会社組織の中で納まりきらない人は、自営業を展開していきます。闘争心より恐怖心が強い人は、人間関係に失敗を繰り返し、仕事や人間関係が長続きせずに、不幸になりやすいです。
13)自己愛の負の感情の大きさ
自己愛性パーソナリティ障害を持つ人々に対しては、嫉妬を引き起こさないように注意することが重要です。彼らは、相手の容姿や服装、能力、育ちの良さなどに憧れる一方で、同時に強い嫉妬や羨望、不満を感じることが多いです。彼らは過去に深い屈辱を味わった経験があり、その傷は今でも癒えていません。些細なことであっても、その屈辱感が刺激されると、極度に傷つき、その結果として無意識のうちに相手を傷つけようとする衝動に駆られることがあります。場合によっては、非常に危険な行動に出ることもあり、ターゲットにされた相手は、予期せぬトラブルに巻き込まれ、不幸な運命を辿ることになりかねません。
自己愛性パーソナリティ障害を持つ人々と関わる際には、彼らの繊細な心情や過去の傷を理解し、慎重に接することが求められます。嫉妬や屈辱感を刺激しないようにすることが、円滑な関係を保つための一つの方法です。
14)自己愛者と接する事の注意点
自己愛性パーソナリティ障害を持つ人は、自己中心的で狡猾であり、常に自分の利益や欲望を最優先に考えています。そのため、相手を本当に思いやることができません。彼らと接する際には、自分ができることとできないことを明確にし、無理をしてまで何かをしてあげる必要はありません。たとえ一生懸命に尽くしても、その努力に対する見返りはほとんど期待できないでしょう。
さらに、彼らは時間が経つにつれて、ますます厚かましくなり、要求のレベルがどんどん高くなっていきます。彼らは相手を自分の手足のように扱い、思い通りに動かないと怒りを爆発させることがあります。こうした関係は非常に消耗するものであり、相手にとって大きな負担となります。自己愛性パーソナリティ障害を持つ人との関わりでは、自己を守りつつ、無理なく対応することが重要です。
15)自己愛から逃げる勇気
自己愛性パーソナリティ障害を持つ人と長時間関わると、心身ともに疲れ切ってしまうことがあるでしょう。毎日顔を合わせなければならない状況では、ボロボロになる前にその場を離れることが、勇気ある行動となることもあります。自己愛性パーソナリティ障害を持つ人と関われば関わるほど、不当に利用されることが多く、結果として心や体に病気を抱え、自分自身の運気を下げてしまう可能性があります。
自分の本当の幸せを考えると、病的な自己愛を持つ利己的な人よりも、利他的で思いやりのある人と共に過ごす方が、はるかに充実した人生を送ることができるでしょう。自分を大切にし、健全な人間関係を築くことが、長期的な幸せへの鍵となります。
16)自己愛性人格障害への対処
健康的な自己愛を持つ人は、社会的な交流を通じて安心感や安全感を得て、自分自身を大切にすることができます。一方、病的な自己愛を持つ人は、社会の中で自分を脅かす存在との闘争を繰り返し、その結果として得られる安心感を通じて、ようやく自分に価値があると感じます。このため、自己愛性パーソナリティ障害を持つ人は、他者と協調するよりも、勝ち負けにこだわり、負けず嫌いな傾向が強くなります。
パートナーとして、彼らのトラウマにまみれた闘争の歴史をしっかりと聞いてあげ、尊重することが重要です。また、生活全般におけるストレスと緊張を少しずつ減らしていくことで、彼らも次第に落ち着いた生活を送れるようになります。パートナーが理解と配慮を持って接することで、彼らとの関係もより安定し、穏やかなものへと変わるでしょう。
17)自己愛性人格障害の克服
普通に接するだけでは、自己愛性パーソナリティ障害を持つ人を変えることは難しいでしょう。彼らを本当に変えたいと考えるなら、自分自身が強い個性と確固たる世界観を持つことが必要です。彼らの思い通りに動くのではなく、逆にこちらが彼らに影響を与えられるように努めましょう。彼らが憧れるような強く正しい人間、あるいは理想的な人間としての姿を見せることが大切です。
人格の変容には、彼らが理想化している相手に対して闘争モード(自己愛憤怒)に入ることで、その相手を傷つけてしまうことがあります。このような状況では、理想化されている側が「大切にしてあげられなくてごめんね」といった言葉をかけることが重要です。また、「闘争モードを引き起こした原因は自分にある」と自分の非や弱点を認めることで、彼らに対して理解と共感を示すことがポイントになります。
こうした対応によって、自己愛性パーソナリティ障害を持つ人は、理想化していた対象を傷つけたことに対する罪悪感や自責感、悲哀、そして償いの気持ちに満たされます。その結果、二人の関係(良い自己と理想化された対象)は、より深く結びつき、相手に対する求め方の質が変わっていきます。これが新しい行動の獲得に繋がり、自己愛性パーソナリティ障害の改善へと向かっていくのです。
18)自己愛と仲良くなる方法
自己愛性パーソナリティ障害の人は、100%の安全や穏やかに過ごせる場所、誰かに必要とされること、実益を求めています。また、一心同体的な価値観の一致を求めています。安全や実益を求めているため、お金にケチな場合が多くて、プライドの高さから、自分がお金を使う分にはいいのですが、パートナーに勝手にお金を使われるのが嫌で、細かいところまでチェックします。
このような特性があるので、パートナーの方は、彼ら以上にケチになった方が関係はうまくいきます。また、彼らは、穏やかな場所を求めているため、パートナーの方は作り笑顔でもいいので、笑顔でいたほうが良いでしょう。彼らが仕事から帰ってきたときは、喜んで元気に迎えてあげてください。食事のときなどは、お話をしっかり聞いてあげて、価値のあることを情報交換できたらいいですね。また、疲れやすい体質なので、ひとりきりでいたいときには、監視せずに、そっとしておいてあげてください。
自己愛性パーソナリティ障害の人の身体は、身近な人の気配により、肩が上がり、首が固く、眉間やお腹に力が入ってしまいます。パートナーは、近くにいる存在になるので、怒ったり無表情だったり、無視したりすると、彼らに良くない刺激を与える存在になってしまいます。そのため、パートナーの方は、家事をやれるだけやった後は、自分の機嫌が良くなることを第一優先に考えて、身体をリラックスさせることを心がけましょう。彼らがややこしいことを言い出しても、話半分で聞きながら相槌を打っていたらいいと思います。
自己愛性パーソナリティ障害の人は、脅威を遠ざけたいので、部屋の家具の配置など、安全性を考慮したものを一緒に考えていくと良いと思います。刺激が多すぎて疲れてしまう場合には、シンプルな暮らしをしましょう。 また、部屋のホコリや菌、ウィルスを気にする潔癖なところがあったり、生活音が気になったりする場合も多く、パートナーは彼らの特性を理解したうえで関わる必要があるでしょう。
彼らの背後には、トラウマによる過緊張や焦燥感、闘争状態の問題があり、子どもの頃から、不安や危機を感じてきたからこそ、自己愛が病的に肥大化していることを十分理解してあげて、自他の区別をしっかりつけましょう。そして、彼らが緊張・警戒から、さらに追い詰められて、身体が委縮していかないように気をつけながら、たくさん良いところを探してあげて、褒めてあげることが重要です。
パートナーの方は、自己犠牲的に振る舞うのではなく、自分の個性や感情、思ったことをしっかり伝えていったほうが良いです。そして、肩の力を抜いて、くつろいだ状態で関わっていければ、相手も少しずつ安心できるようになります。自己愛性パーソナリティ障害の人があなたを尊敬するようになれば、永続的に良い関係を築けるでよう。
19)その他
自己愛性パーソナリティ障害の人は、小さい時から、ありのままの姿でいられなく、おとなしく暗い自分は嫌なので、仮面を被り、自分を作っています。彼らに接する方は、自分も相手も安心できて、穏やかに過ごせる環境を作ることが重要です。また、自己愛性パーソナリティ障害の人は、内なる子どもの部分が理不尽な相手に捕まえられて、不条理な目に遭わされ、無力に打ちのめされた体験をしているかもしれません。そして、自分だけの使命を持って孤独に戦っているという視点を持てれば、関わり方を変えることができるかもしれません。
最初のうちは、彼らの環境を調整しながら、エネルギー量の調整とストレスの原因を取り除くことが求められます。また、彼らに接する方は、共感的に波長を合わせていくことにより、彼らの断片化した自己がまとまりを帯びていくことに役立ちます。さらに、瞑想やヨガ、ダンスなどのエクササイズに取り組むと、身体内部や精神内部にも注意を向けていく練習になります。身体の中の流動性をじっくり味わいながら、心身を鍛えて、固い部分や弱い部分を解きほぐしていき、生理機能や自己調整能力を強化していくのが良いでしょう。
20)瞑想による神秘的体験の変容
自己愛性パーソナリティ障害の人の心理療法では、従来の対話のみのカウンセリングは、全部表面で滑ってしまって、心にも響かなくて、改善されないまま終わることになるかもしれません。当相談室では、トラウマの種類によって違いますが、本人に絶望や無力な状態に向き合ってもらい、最も堕ちた状態に入ってもらって、そこから反転させることにより、神経システムが平衡状態に戻り、穏やかな性格に変わるという治療を行います。
瞑想により、望みのなさや悲しみ、取り返しのつかない恐怖を思い浮かべていき、身体の反応を見ていきます。そして、地獄の最下層の凍漬地獄に辿りつくと、身体と心に反応が起きて、それらを体験しつくすと、天国への階段を昇ります。その過程で、息苦しく、血の気が引いて、鳥肌が立って、涙が溢れて、手足が震えて、温かいピリピリとした波に包まれるような体験をされるかもしれません。
最終的に、温かいものが両腕や両太もも、身体の中に入ってくるかもしれません。また、手足が膨らんで、ほっぺも膨らんで、首と肩がリラックスして、お腹の中が熱く柔らかい感じがするかもしれません。このように身体の内側から変化を起こし、生きた心地を取り戻すようなセッションを繰り返して、新しい自分に生まれ変わることを目指します。
トラウマケア専門こころのえ相談室
更新:2020-06-24
論考 井上陽平