自己愛性人格障害の治療法

▶自己愛性パーソナリティ障害の人は…

 

若いうちに自分が自己愛性パーソナリティ障害だと気づくことはほとんどありません。しかし、病的な自己愛を持つ人ほど、中年期になり、自分の魅力が落ちて、人間関係が上手くいかなくなったり、対象喪失を経験したり、上昇志向が様々な障害にぶつかるようになります。生活全般のストレスから、こころや身体に症状が表れ始めて、または慢性疾患に罹るなどして、自分のことを本やネットで調べていくうちに気づくことがあります。基本的に自己愛性パーソナリティ障害の人は、自分のことで本当に困らないと自分の性格の偏りには気づけません。ですが、周りの人たちは困り果てているので、あの人は自己愛性パーソナリティ障害であることをうすうす気づいていることがよくあります。また、自己愛性パーソナリティ障害の人は、対象に求める質が病的であり、社会の中では、強者でいることが多いため、パワーハラスメントやモラルハラスメント、セクシャルハラスメントに関わってきます。

 

トラウマを負っている自己愛性パーソナリティ障害の人は、原始的なレベルでは今だ自分が安全だとは気づいておらず、闘争状態に共鳴したままです。子どもの頃の未解決な子どもの部分は、不条理な目に合わせてくる加害者に捕らわれており、迫害を受けてきました。そのため、生き残りの戦略として、強い自分になる必要があり、危険に立ち向かって、自分だけの使命を持って孤独に戦ってきました。当相談室では、リラクセーション技法を用いて、体を休ませてリラックスしていき、呼吸、心拍数、血圧などを通常の範囲内に戻していきます。また、自分の内的な精神活動や身体感覚の流れに意識を集中させることで、今ここを生きれるようにして、まとまりのある自己感覚を持てるようにします。そして、自分も相手も居心地よく過ごせるような関係を築くにはどうすればいいか考えてもらって、本当に自分が安心して過ごせるように支援していきます。日常生活を落ち着いて過ごすことができるようになれば、悪魔的な部分が影を潜めて、良い自己の方が全面に出てくるようになります。つまり、交感神経と腹側迷走神経のバランスを適度にすることで、闘争の身体反応が減少し、ストレスによる自己中心的な行動が抑制され、自制心が高まります。そして、体と気持ちが静まり、落ち着いて過ごすができるようになります。

 

▶自己愛性パーソナリティ障害の治療法

 

自己愛性パーソナリティ障害の治療は、コフートの精神分析自己心理学に基づいたカウンセリングが有効と言われています。まずは、セラピストの方がある程度、理想化されている必要があります。そして、セラピストは、共感的に波長を合わせて話を聞いていきます。また、セラピストの方が自分の無知さを認めて、分かっていなくてごめんねという態度(弱点で勝負する)を取ります。そうすることでお互いが幼児的万能感の裏側にあるトラウマという不条理な世の中の有り様を振り返れるようになります。そして、悲しみ、苦しみ、傷つきやすさを表出していき、憤り、怒り、嫉妬心を吐き出しながら、闘争を通して、攻撃性や迫害感を統合していきます。精神分析の対象関係論で言えば、無事に抑うつ態勢に達することができれば、等身大の自己を育てていけるようになります。また、親子間や学校社会のこじれが振りほどけないほどの縛りになっている場合は、成育歴を緻密に分析していき、今まで抑圧してきた憤怒の感情を紐解いていきます。そして、大人や周りの身勝手な振る舞いによって、無意識のうちに犠牲となってきた子どもの部分を救い出します。これらをセラピストの温かい共感と人間的な思いやりを通して行います。

 

自己愛性パーソナリティ障害の人は、他者を軽視して、利己的で、自己中心的な行動を取ります。お金や自分の魅力、トークで相手を説得して、支配することで人間関係を作り出します。ただし、そうした利己的な考えや支配による人間関係は、自分のお金が尽きたとき、自分の魅力を失ったとき、年老いて弱ったとき、パートナーの方は、今まで散々な思いをしてきているので、文句を言うようになり、関係が続かなくなります。自己愛性パーソナリティ障害の人は、一般的に合理的な思考が好きなので、人間関係を損得勘定の合理性として見ているなら、本当に実りある関係性にはなれないということを伝えます。そして、この世に星の数ほど人がいるなかで、一人の人を全人格的に愛する不合理さこそが、最終的には幸せになれるという不合理の合理性について一緒に考えていきます。

 

さらに、この世界は、救いがなく、物質的であり、死や決まりきったことがあり、時間・空間に縛られた人間存在の有限性を受け入れていく作業をします。また、生きていくうえで確実に操作できるものや、自分の思い通りにいかないという現実の不確かさに耐えて、悲しみや思いやりの気持ちを育んでいって、等身大の自分のなかに強さや優しさを育てます。こうしたカウンセリングを受けることで、本当の自分が育ち、傷つきにくくなり、自分の失敗や欠点が恐くなくなります。

 

基本的に、人は本来欲求を満たしたい欲望が身体に備わっており、快楽を満たしたいとか、損得を考えて行動しているものです。当カウンセリングルームでは、欲望する心から人を愛する心への転換とか、仲間のために命懸けで戦うとか、リスクを負ってでも高い価値にコミットできるといった高次の意識状態を目指していき、新しい自分に生まれ変わるような変化を目標にしてます。 

 

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