自己愛性人格障害の治療法
若いうちに自分が自己愛性パーソナリティ障害だと気づくことはなかなかありません。中年期になり、自分の魅力が落ちて、人間関係が上手くいかなくなったり、対象喪失を経験したり、上昇志向が様々な障害にぶつかるようになることで、こころや身体に様々な症状が現れ、自分のことを本やネットで調べていくうちに気づくことがあります。基本的に自己愛性パーソナリティ障害の人は、自分のことで本当に困らないと自分の性格の偏りには気づけません。ですので、自分が困るというより、周囲の人が困っていたり、あの人は自己愛性人格障害だと、周りがうすうす気づいていたりすることがほとんどです。また、自己愛性パーソナリティ障害の人は、社会の中では、強者であり、パワーハラスメントやモラルハラスメントに関わってきます。

 

トラウマを負っている自己愛性パーソナリティ障害の人は、原始的なレベルでは今だ自分が安全だとは気づいておらず、闘争状態に共鳴したままです。子どもの頃の未解決な子どもの部分は、不条理な目に合わせてくる加害者に捕らわれており、強い自分になり、危険に立ち向かおうとして、戦っています。当相談室では、リラクゼーション技法等を用いて、自分も相手も居心地よく過ごせるような状況に慣れていってもらって、本当に自分が安心して過ごせるように支援します。日常生活を落ち着いて過ごすことができるようになれば、悪魔的な部分が影を潜めて、良い自己の方が全面に出てくるようになります。

 

自己愛性パーソナリティ障害の治療は、コフートの精神分析自己心理学に基づいたカウンセリングが有効と言われています。まずは、セラピストの方が自分の無知さを認めて、分かっていなくてごめんねという態度でいます。そうすることでお互いの幼児的万能感の裏側にあるトラウマという不条理な世の中の有り様を振り返っていき、悲しみ、苦しみ、絶望し、傷つきやすさを表出していきます。そして、憤り、怒り、嫉妬した気持ちを吐き出し、闘争を通して、攻撃性を統合することができれば、抑うつ態勢に達することが目標になります。また、親子間や学校社会のこじれが振りほどけないほどの縛りとなっていることがあるので、成育歴を緻密に分析していき、今まで抑圧してきた憤怒の感情を紐解いていきます。そして、大人や周りの身勝手な振る舞いによって、無意識のうちに犠牲となった子どもの部分を救い出すことができるかどうかになります。これらをセラピストの温かい共感と人間的な関わりを通して行います。

 

自己愛性パーソナリティ障害の人は、他者を軽視して、利己的で、自己中心的な行動を取ります。お金や自分の魅力、トークで相手を説得して、支配することで人間関係を作り出します。ただし、そうした利己的な考えや支配による人間関係は、自分のお金が尽きたとき、自分の魅力を失ったとき、年老いて弱ったとき、相手の方も嫌気がさしているので、文句を言うようになり、関係が続きません。自己愛性パーソナリティ障害の人は、一般的に合理的な思考が好きなので、人間関係を損得勘定の合理性としてだけ見ているなら、本当に実りある関係にはなれないということを伝えます。そして、この世に星の数ほど人がいるなかで、一人の人を全人格的に愛する不合理さこそが、最終的には幸せになれるという不合理の合理性について一緒に考えていきます。

 

さらに、この世界は、救いがなく、物質的であり、死や決まりきったことがあり、時間・空間に縛られた人間存在の有限性を受け入れていく作業をします。また、生きていくうえで確実に操作できるもの、理解できるものがないという不確かさに耐えて、哀れみや思いやりの気持ちをセラピストと育んでいき、等身大の自分のなかに強さや優しさを育てます。こうしたカウンセリングを受けることで、本当の自分が育ち、傷つきにくくなり、自分の失敗や欠点が恐くなくなります。

 

基本的に、人は欲望する心を持っており、損得を考えて行動しているものです。当カウンセリングルームでは、欲望する心から人を愛する心への転換や、仲間を命懸けで守るとか、リスクを負ってでも高い価値にコミットできるといった高次の意識状態を目指していき、新しい自分に生まれ変わるような変化を目標にしてます。