自己愛性人格障害(無関心型・過敏型)

▶自己愛性パーソナリティ障害の特徴

 

自己愛パーソナリティ障害の特徴を記述していきます。自己愛性パーソナリティ障害の人は、恥ずかしがり屋で、幼児期から児童期にかけて、弱くみじめな立場にいて鬱屈しており、仲の良い家族や育ちの良い人を恨ましく思い、特に親や兄弟との関係で無力化させられています。そのため、不平、不満、恨みを晴らすために力強い何かに溺れたいと力やスリルを希求します。そして、トラウマティックな変性意識状態(過覚醒)を通じて、理想化された対象を求めて、力のある誇大的自己と同一化し、弱くみじめな無能的自己との間で分裂していきます。この神経学的かつ心理学的意味においての分裂が自己愛性、境界性などの各種のパーソナリティ障害や精神疾患、心身症の基盤を作ります。誇大的自己と同一化した部分は、弱さを恥じて、理想やスリルを追い求めるとか、ただただ強くなろうとして自分の技能を高め、敵と対抗して戦うために交感神経の働きを活発化させ、攻撃性が病的に拡大されていきます(基本的に、女性は攻撃性が内側に向きやすい、男性は攻撃性が外側に向きやすい)。また、交感神経の働きが優位になると、理性的な判断がしづらくなり、注意散漫になりますが、自己暗示で自分は特別な存在だと信じたり、自分と他者を比較して勝ち負けにこだわるようになります。さらに、自分が常識で、善悪の判定者であるかのようにふるまい、優れた人物であるようにと印象操作し、自分の欠点に気づかないようにするために他者の欠点を暴き、賞賛してもらうために他者を利用したりします。その一方、無能的自己の方は、生活全般の困難に対して逃避的で、人目を避けたり、人に背を見せるのが怖かったり、自分は何もすることができないといった諦めが条件付けられています。また、物質的に満たされる環境であっても、自己存在感が希薄で、自分には価値がないと感じており、他者の批判をうまく処理することができないため、なかには自己愛憤怒や固まり、不動化といった破綻恐怖を持つ人がいます。無能的自己は、いかに自分がダメな人間かを分かっていて、日常生活の衝撃や恐怖によって内側に閉じこもっている場合があります。

 

誇大的自己と無能的自己の間で、強い解離があって、家庭や学校社会で不条理な目に遭わされ、この現実を拒絶した人のなかには、激しい怒りと過覚醒を基盤とした自己中心的な支配衝動に駆られ、反抗挑戦性障害や反社会性パーソナリティ障害になっていく方もおられます。でも、ほとんどの子どもは、この過覚醒の衝動を異質なものとして押し戻そうとします。そして、日常生活に適応しようとして、周囲の評価を過剰に気にしながら、自分の劣等感を偽り、みんなに賞賛されようと努力するとか、他者に批判されないように、先手をうって完璧で安心できる環境を作っています。一方で、恥ずかしめられた者の怒りのエネルギーは、弱い相手に向けられ、尊大で傲慢な態度(批判的、自己没頭、不寛容、自己中心的思考、操作的)をとることがあります。サディスティックな部分と理性の部分が親和的になっていくと、モラハラする自己愛性パーソナリティ障害や反社会性パーソナリティ障害になります。

 

▶境界性パーソナリティ障害と自己愛性パーソナリティ障害の違い

 

境界性パーソナリティ障害は、女性に多く、愛着システムに作動された人格部分が日常生活を大部分を担っていますが、何らかのトラウマによって感情と自己調整機能が阻害されています。そして、内部崩壊を起こすような情動的人格部分をコントロールできないことに悩んでいて、愛着対象との関係で心の安定を保ちます。自己愛性パーソナリティ障害は、男性に多く、理想や力を求めて自分には実現できないことなど何もないといった尊大で全能感を持つ誇大的自己と、もう一方の逃避的で自分は何もすることができないといった臆病な無能的自己の両面を持っています。そして、相手や場面によって振り子のように両極端に動いています(健康な自己愛を持つ人はあまり動かない)。自己愛性パーソナリティ障害は、境界性パーソナリティ障害と人格構造の水準は似ていますが、自己愛性パーソナリティ障害の方が自己の構造は安定しています。

 

▶自己愛無関心型と自己愛過敏型

 

自己愛性パーソナリティ障害の人を大きく分けると自己愛無関心型と自己愛過敏型の2タイプあると言われています。自己愛無関心型は、力や成功を勝ち得るために誇大的自己と同一化した人格部分が日常生活の大部分を担っており、弱くみじめで無力な自己はどこかに隠れています。自己愛過敏型は、周囲の評価を気にしながら、内気で恥ずかしがりやを見せていますが、一方で、本当の自分は優れていると思っており、傲慢な誇大的自己がときどき顔を出すことがあります。従来の自己愛性パーソナリティ障害で言われているのは、自己愛無関心型です。自己愛過敏型は、回避性パーソナリティ障害と重なるところがあり、恥の感情に特徴づけられ、周囲の人が自分にどういった反応をするかに非常に敏感で、他者からの批判に傷つきやすく、容易に侮辱されたと感じてしまいます。そして、他者に非難されたり、欠点を指摘されることを恐れ、社会的に引きこもることで葛藤を避け、自己の万能世界を築きあげようとします。

 

自己愛性パーソナリティ障害の人は、母親(養育者)との関係で傷ついており、愛されなかった自分は生まれつき劣っていて、無能であり、理想化された幻想的な母子一体感を求めて過敏に反応しやすく、内気で弱弱しい一面があります。一方で、子どもの頃の不幸を回避するため、理想化された対象をめぐるポジション争いにおいては、尊大になり、ライバルに対しては、悔しさや憎悪の感情が向けられ、こき下ろしたり、自分のしていることに無自覚でいることが多いように思います。自己愛性パーソナリティ障害の人がパートナーに対して、両極端なところの悪いほうに傾くと、尊大で傲慢な態度をとり、その結果として、パートナーはドメスティックバイオレンスやモラルハラスメントなどの被害を受けることになります。

 

一般的には、自己愛性パーソナリティ障害の夫が、自分の誇大な自己像を満たすために、仕事なので外面を良くしているうちに、自分の仕事と家庭の二つをこなすことが精一杯になり、エネルギーが切れると、些細なことで苛立ち、鬱屈した感情を妻に晴らすようになります。例えば、夫の方が自分はこれだけ頑張っているのに、おまえはどうなんだというふうに、妻の態度に腹を立てるようになり、人格否定が繰り返されて、何時間でも説教するようになります。また、自己愛性パーソナリティ障害の夫は、理想化された幻想的な母子一体感を求めているので、自分の思い通りにコントロールしようとして、妻の方は精神的は追いつめられていきます。その他にも、自己愛性パーソナリティ障害の母親は、自分が人にどう思われているのか関心があるので、恐ろしいほど自己中心的で、子どもを自分を優越感を得るための道具やアクセサリーとして扱います。

 

▶自己愛性パーソナリティ障害の診断基準(DSM-5)

 

(1)自分が重要であるという誇大な感覚(例:業績や才能を誇張する、十分な業績がないにもかかわらず優れていると認められることを期待する)

(2)限りない成功、権力、才気、美しさ、あるいは理想的な愛の空想にとらわれている。

(3)自分が ”特別” であり、独特であり、他の特別なまたは地位の高い人達(または団体)だけ理解しうる、または関係があるべきだ、と信じている。

(4)過剰な賛美を求める。

(5)特権意識(つまり、特別有利な取り計らい、または自分が期待すれば相手が自動的に従うことを理由もなく期待する)。

(6)対人関係で相手を不当に利用する(すなわち、自分自身の目的を達成するために他人を利用する)。

(7)共感の欠如:他人の気持ちおよび欲求を認識しようとしない、またはそれに気づこうとしない。

(8)しばしば他人に嫉妬する、または他人が自分に嫉妬していると思い込む。

(9)尊大で傲慢な行動、または態度。

(以上のうち五つ、またはそれ以上によって示される)

 

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