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複雑なトラウマがある人への接し方

トラウマがある人の特徴と接し方42項目


発達早期からトラウマを抱えた人は、幼少期から続く脅威によって、生活全般が困難になり、体内に過剰なエネルギーが滞り、不快な感覚が残ります。その結果、身体の弱い部分に症状が現れることがあります。過去の被害体験に対して敏感すぎるため、些細な出来事でも不安や動揺に襲われ、自分の周囲に安心感を求めるようになりますが、自分自身の主体性が育ちにくい状況にあります。普段からリラックスしようとしても、身体が落ち着かず、外部の気配や人々、音、匂い、振動などに敏感に反応し、不意に何かが迫ってくると、驚愕反応が生じます。そして、トラウマのトリガーが引かれると、過覚醒や凍りつき状態に陥ることがあります。

 

トラウマが複雑な人は、「いかに生き延びるか」という考えが常に頭を支配し、周囲の人々をよく観察しながら生活していますが、心の中では常に警報が鳴り続けています。身体は本来危険でない状況にも過剰に反応し、結果として世界を敵だらけに感じることがあります。このような世界観の中で、人間関係は「加害か被害か」という極端な二者択一になり、社会的資源を有効に活用することが難しくなります。

 

トラウマを抱える人の頭の中では、物事が「好ましいか嫌悪するか」という二極で評価され、心地よいものに対しては気分が良くなり、身体が温かく軽く感じられ、体調も良くなります。しかし、不快なものに対しては、原始的な神経が働き、筋肉が縮んで神経が圧迫され、呼吸がしづらくなり、心臓に違和感が生じ、体調が悪化します。不快な刺激に対して、焦りや苛立ちを感じながらも活発に動いて問題を解決しようとする人と、何もできずに体調を崩して動けなくなる人がいます。

 

トラウマを抱える人は、快適な刺激には積極的に接近し、不快な刺激を避けようとします。しかし、回避できない危機的な状況に陥ると、闘争・逃走モードに入るか、凍りつきや死んだふりといった防衛反応を示します。それでも防衛が突破されると、絶望や無力感に陥り、慢性的に身体を麻痺させて過ごすようになります。健康な人でも快適なものを求め、不快なものを避けるのは通常の反応ですが、発達早期に過酷な体験をした人ほど、不快な刺激に対して身体が極度に反応します。例えば、不快な刺激に過敏になり、過剰に驚いたり、フリーズしたり、思考がまとまらなくなったり、動けなくなったりします。

 

これらの特性から、トラウマを抱える人は、脅威を遠ざけようとする防衛反応が強まり、好き嫌いが激しくなる傾向があります。また、トラウマによって身体の不安が強まると、自分が自分でなくなる感覚が生じ、時間感覚が停止し、感情が鈍麻し、集中力が低下し、思考が混乱します。トラウマを抱える人は、このような状態にある中で、穏やかに、ゆっくりと過ごしながら、自分を本当に助けてくれる人を心底求めています。

 

①トラウマというのは

 

トラウマは、予期せぬアクシデントや、長期間にわたり養育者から受けた酷い経験など、心と体に深い傷を刻むものです。一度トラウマを抱えてしまうと、その記憶は単なる辛い経験としてだけではなく、身体の痛みとして深く刻まれ、忘れることが難しくなります。まるで心と体に抱えた爆弾のようで、それに触れられることを極端に恐れます。常に何かに怯え、緊張し、自分では対処できない事態が起こることを避けようとします。また、同じように傷つくことを恐れて、相手の行動や言動を細かく予測し、傷つかないように努めます。

 

トラウマを抱える人々は、これ以上傷つくことを何よりも恐れており、不確実な状況や予想外の出来事に対して非常に敏感です。そうした要素がトラウマのトリガーとなり、彼らの心に新たな傷を刻むことがあります。そのため、彼らの傍にいる人は、まず彼らの味方として寄り添い、想定外のことが起きても冷静に対処できるような心の強さを一緒に育てることが重要です。常に安心感を提供し、彼らが安心して過ごせる環境を整えることで、トラウマの影響を少しでも軽減し、日常生活を支えていきましょう。

 

②驚愕反応

 

トラウマを抱えている人は、不快な音や気配、たとえば怒鳴り声や怒っている人、扉の閉まる音、工事の音などが苦手で、不意にショックなことが起こると、過剰に驚く反応(驚愕反応)を示します。この反応は、突然ビクッとし、心臓が縮み上がるような痛みや、心臓を握りしめられるような感覚を伴い、その後も動悸が激しくなったり、息苦しさに襲われたりします。人によっては、過覚醒状態に陥り、手足がピリピリとしびれたり、身体が凍りついたように動けなくなったり、考えがまとまらず頭が真っ白になったりすることもあります。また、まるで体から魂が離れていくような感覚に襲われ、強烈な恐怖にとらわれることもあります。

 

こうした驚愕反応のために、彼らは日常生活で人の気配や音に過敏になり、常に神経を張り詰め、警戒しながら過ごしています。逃げ場がなく、追い詰められたと感じると、不安と恐怖のなかで体を小さく丸め、現実の苦痛に耐えるしかなくなります。

 

健常者にとって、こうした驚愕反応は理解しにくいため、サポートする際には特に注意が必要です。彼らを驚かせるような大きな音を立てたり、突然背後に立ったり、不意打ちを仕掛けるようなことは避けましょう。また、怒りや口論といった激しい感情の表現も、彼らにとっては大きなストレスとなります。驚愕反応を引き起こさないために、静かで安心できる環境を整えることが大切です。

 

③相手のペースで

 

トラウマを抱えている人は、現実世界の生々しい刺激に非常に敏感で、自律神経系が乱れやすく、感情や自己調整機能に障害を抱えています。彼らは自分で感情をコントロールするのが難しく、過度に興奮したり、攻撃的になって相手を罵倒してしまったり、逆にフリーズして動けなくなってしまうことがあります。こうした行動によって周囲に迷惑をかけてしまったと感じると、自分を責める一方で、他人のために尽くし、役立ちたいという強い願望を持っています。

 

また、彼らは一つのことに注意を集中して頑張りすぎる傾向があり、過度に覚醒して(テンションが上がりすぎて)しまうことがあります。この状態になると、周囲の人がそのペースについていけず、イライラしたり、逆に彼ら自身が頑張りすぎてエネルギーが尽きてしまい、体調不良を引き起こすこともあります。

 

サポートする人は、トラウマを抱えた人のペースにできるだけ寄り添い、彼らが自発的に行っている活動を尊重しつつ、その行為に身を委ねることが大切です。そして、彼らが無理をして自分の身体の状態に気づいていないときには、適切なタイミングで「少し休んだほうがいいよ」と優しく声をかけ、休息を促しましょう。

 

④ある出来事に対する解離反応

 

トラウマを抱える人が不安を感じ始めると、胸がざわつき、落ち着かなくなり、その感覚を閉じ込めようとして内向的になります。また、自分ではどうしていいかわからない場面では、身体が凍りついたり、動けなくなって一つの場所を見つめたり、ぼーっとして抜け殻のようになったり、無表情や無反応な状態になることがあります。これらの反応は解離の兆候であり、彼らにとって非常に苦痛なものです。

 

 そのため、彼らがこのような反応を示した場合、同じような状況を避けるよう配慮することが大切です。恋人や夫婦間でこのような状態が見られたときは、手を優しく握る、背中をさする、心地よい香りを嗅いでもらう、ぎゅっと抱きしめるなどの行動が有効です。これによって、トラウマによって凍りついたエネルギーが解きほぐされ、徐々に状態が改善されることが期待できます。

 

⑤笑顔でいる

 

子どもの頃からトラウマを抱えている人は、相手の顔色を常に伺い、その表情から瞬時に物事を判断する習慣が身についています。彼らは、相手の表情を「怒っている」と認知してしまう傾向があり、相手が何気なく言った言葉さえも否定的に受け取ってしまうことがよくあります。そのため、隣にいる人が無表情でいると、それを怒りと捉えてしまい、過剰に反応してしまう危険性があります。傍にいてサポートする人は、彼らが安心できるように、できるだけ笑顔で接し、温かく迎え入れることを心がけましょう。笑顔が、彼らにとっての安心感を与え、過度な警戒心を和らげる助けとなります。

 

⑥周囲を過剰に気にしてしまう

 

トラウマを抱えている人は、防衛本能が過敏に働きやすく、人の気配や態度、表情、足音、物音、声、話の内容、匂い、振動、光、気圧など、あらゆる外部の刺激に敏感に反応します。彼らは外界を脅威と感じやすく、脳が危険を察知すると、無意識に警戒心が強まり、頭の中で警報が鳴り響くような状態に陥ります。このとき、身体に封じ込めていたトラウマが活発化し、ソワソワ、モヤモヤ、ザワザワ、ムズムズといった不快な感覚が現れ、落ち着きがなくなります。そして、不安や苛立ち、焦燥感に駆られ、何か行動を起こしたくなります。

 

身体は目に見えない敵と戦っているかのように緊張し、肩が上がり、手足に力が入り、反応が速くなり、周囲を注意深く見渡します。本能的には、何かに常に脅かされているように感じているのです。彼らは他者の視線や反応、行動、仕草に敏感で、キョロキョロと周りを見渡したり、相手の顔色をじっと観察します。そして、相手の機嫌を取るために行動するか、一方的に心を閉ざしてしまうか、あるいは反抗的な態度をとることがあります。

 

一般的には、自分の攻撃性を抑えながら、相手を深く考慮し、相手の中に入り込んで自分を安心させようとします。しかし、彼らの身体の中には常にトラウマという「爆弾」が存在しており、安心感を持つことが難しい状態が続きます。そのため、周りに安心感を求めてやみません。

 

傍にいてサポートする人は、トラウマを負った人が安心できるよう、過剰な視線を避け、彼らが安心感を感じやすい方角に位置するように配慮することが大切です。また、安心感を与える存在として、トラウマを負った人が少しでもリラックスできるようにサポートしていきましょう。

 

⑦再体験と過覚醒

 

日常生活の中で混乱が生じると、過去に受けたトラウマの記憶が蘇り、その時の情景や感情が鮮明に浮かび上がってきます。身体全体に寒気が走り、周囲のすべてが恐怖の対象に見えることもあります。特に不快な状況では、無意識のうちに交感神経が活性化し、過覚醒状態に陥ることがあります。この状態では、わずかな刺激にも過敏に反応し、肩が上がり、手足に力が入り、身体が自分の意志とは無関係に動き出すこともあります。

 

過覚醒状態にあると、不安や動揺が増幅され、相手の行為や意図を疑うようになり、細かい点まで入念に調べようとします。相手の反応が自分の期待に沿わないと、焦りや苛立ちが募り、じっとしていられなくなり、自分で自分をコントロールできなくなってしまうことがあります。その結果、感情を相手にぶつけてしまい、後で後悔することも少なくありません。

 

このようなトラウマの再体験や過覚醒症状に対処するためには、心の余裕を取り戻すことが大切です。瞑想や呼吸法、ヨガなどが効果的だと言われています。また、今ここに意識を集中させるために、肩を動かしてほぐしたり、自分の手で身体をマッサージして心地よい感覚を得たり、コップ一杯の水をゆっくり飲むことで落ち着きを取り戻すことができる人もいます。こうした対処法を取り入れることで、過去のトラウマに引きずられることなく、現在の自分に戻る手助けとなるでしょう。

 

⑧うつ状態と躁状態

 

慢性的なトラウマを抱える人は、身体が常に闘争/逃走反応、凍りつき、不動、虚脱などの反応を繰り返し、その結果、感情の起伏が激しくなります。彼らは、躁状態とうつ状態の間を頻繁に行き来することが特徴です。うつ状態にあるとき、彼らは人間関係に深く思い悩み、八方塞がりの状況に陥り、無力感と絶望感に押しつぶされ、何も手につかなくなります。

 

しかし、この沈んでいた気持ちが突然反転すると、躁状態に突入します。躁状態では、急に前向きになり、思考も活動も過剰に活発になり、すべてがうまくいきそうな無敵の感覚に包まれます。このとき、体にはエネルギーが満ち溢れ、集中力も高まるため、勢いのまま行動に移し、時には無茶をしてしまうこともあります。

 

しかし、その無茶が原因で、ややこしい問題が発生し、それが恐怖や恥につながり、結果的に自己嫌悪を引き起こします。そして、再びうつ状態に戻り、落ち込んでしまうという悪循環に陥ります。彼らの内面的な波は、日常生活に大きな影響を及ぼし、安定した心と身体の状態を保つことが難しい状況を作り出します。

 

⑨先読みして先手をうち、警戒する

 

トラウマを抱える人は、人から怒られたり、目の前で誰かが怒っている場面に直面すると、心臓が激しく鼓動し、フラッシュバックを引き起こしてしまいます。このフラッシュバックにより、過去の辛い体験が蘇り、その瞬間に嫌な感覚が全身を包み込み、まるで過去の苦しみを再び生きているかのように感じてしまいます。その結果、気分が沈み、無力感や絶望感に苛まれることが多くなります。

 

こうした経験から、彼らは日常生活において失敗を避けるために、事前の準備を徹底的に行います。相手を怒らせないようにと、常に先を読み、予防的に行動することで、自分を守ろうとします。また、不意を突かれることや、想定外の出来事が起こらないよう、警戒心が一層強まり、過度に緊張した状態が続いてしまいます。結果として、常に自分を守るために縛られたような人生を送ることになります。

 

サポートする人は、彼らにとってのトラウマの脅威源を理解し、それに近づかないように配慮することが大切です。また、彼らが安心して過ごせるように、適切に誘導し、無理のない環境を整えてあげることが重要です。彼らが少しでもリラックスできるような空間を提供し、トラウマの影響を最小限に抑える手助けをしましょう。

 

⑩防衛意識の違い

 

複雑なトラウマを抱えた人は、神経が敏感で、危機に直面した際の防衛反応が過剰になる傾向があります。その結果、物事を悲観的に捉えがちです。幼少期から生き延びるための「サバイバル脳」が発達し、常に「どうやったら生き延びられるか」を考えながら、周囲を観察し、冷静に判断する力を身につけてきました。このため、普通の人よりも脅威を察知する能力や危機管理能力が高く、常に最悪の事態を想定して行動することで、不安やストレスを軽減してきたのです。

 

そのため、トラウマを持つ人ほど防衛意識が強く、心配性な傾向があります。彼らは、周囲の人たちが危機を察知する能力や計画性、段取り、理解力に欠けていると感じることが多く、そのギャップから価値観の食い違いが生まれることがあります。トラウマを抱えた人と、そうでない人の間には、防衛意識や危機への対応の仕方に大きな違いがあることを理解し、接することが大切です。

 

⑪他人との線引きが苦手

 

トラウマを抱えている人は、過酷な人生経験を経てきたため、他者からの接近や甘えに対して、敵意を抱くことがあります。彼らの内面には、自分でもコントロールできない恐怖や怒りといった強い情動が渦巻いており、他人との距離感を適切に保つことが難しいことがよくあります。例えば、口論が始まると、自分を守ることに必死になり、言い合いがエスカレートして、相手を罵倒したり、時には暴力に発展することもあります。このような状況では、彼らの本来の自己は恐怖で凍りつき、自分自身を見失い、怒りを抑えることができなくなります。フラッシュバックや動けなくなることもあり、その後、錯乱状態に陥って壁に頭を打ち付けたり、自傷行為に走ることもあるのです。

 

傍にいて支える人は、彼らが心に痛みを感じたら、その領域に無理に踏み込むのではなく、凍りつきやフラッシュバックが起こる前に、しっかりと謝罪し、問題を解決することが重要です。彼らの痛みを理解し、適切な距離を保ちながらサポートすることで、状況の悪化を防ぎ、彼らの心に少しでも安定をもたらすことができます。

 

⑫自他の境界が弱く、情報が自分に入ってくる

 

幼い頃から家や学校で自分の思うようにできないことが多く、その結果、身体をずっと緊張させて過ごしてきた人たちは、やがてその限界を迎え、心のバリアが壊れてしまいます。心のバリアが壊れると、神経が過敏になり、周りの情報や他人の感情が、まるで自分自身のことのように感じられるようになります。例えば、職場で同僚が上司に叱られている場面を目にすると、自分が叱られているかのように感じ、自分と他人の境界線が曖昧になってしまうのです。環境がネガティブなものであれば、それがすべて自分に影響を与え、その場にいることが耐えられなくなります。

 

このような状態から回復し、再び心のバリアを構築するためには、彼らが「安心してもいい」と感じられる身体と環境を整えることが必要です。周囲の人々は、彼らが安心感を持てるようなサポートを提供し、リラックスした状態を取り戻せるように手助けをしていくことが重要です。

 

⑬同調傾向

 

トラウマを抱える人々は、脳の視床が正常にフィルター機能を果たさないため、人混みの中で過剰な情報が一気に押し寄せ、不安定になりやすくなります。この結果、視野が狭くなったり、感覚が遮断されたり、注意が散漫になったり、逆に過集中に陥ったりと、警戒心や過敏性が非常に高まることがあります。また、相手の言葉や思考、感情を身体全体で感じ取る傾向があり、自他の区別が曖昧になってしまうことも少なくありません。こうした状態では、筋肉が緊張して硬直したり、身体が勝手に反応したりすることがあり、体調不良や胸の苦しさ、感情のコントロールの難しさといった症状が現れます。その結果、他の人と比べて自分がどこか違っている、ずれていると感じ、自分は変わっているとか、劣っているというネガティブな自己イメージを持つことがあります。

 

彼らは失敗や嫌われることを避けようとするため、周りの様子を伺い、相手に過剰に同調しようとする傾向があります。場合によっては、あなたの行動まで真似しようとするかもしれませんが、そのような行動に対して温かく見守ってあげることが大切です。彼らが安心感を持てる環境を整え、少しずつ自己肯定感を取り戻せるようにサポートしていくことが、彼らの心の回復に繋がります。

 

⑭こだわりが強く、苦手なことが多い

 

トラウマを抱える人は、緊張や恐怖が高まる場面で、特定の身体部分が固まり、動けなくなることがあります。これは、過去のトラウマが無意識のうちに再現されているかのように感じられ、原始的な神経反応が引き起こされることで、体調不良が生じるためです。その結果、恐怖から取り乱したり、感情的になったり、ある行動を頑なに避けたりすることがあります。例えば、電気を消して寝ることや暗闇を恐れる、歯医者に行くことや予防注射を避ける、嫌いな食べ物を拒否するなど、特定の状況に強い不安を抱くことがあります。また、朝礼や学校の行事など集団での活動では、身体が何かを強要されていると感じ、危険を察知して体調不良を引き起こしやすくなります。そのため、皆と同じ行動を取ることに抵抗を感じ、集団活動に参加したがらないことがあります。特に、身体を固定されたり、縛られたりすることに対して極端な嫌悪感を抱き、反抗的な態度を示すこともあります。

 

こうしたこだわりの背景には、幼少期のトラウマが隠れていることが多く、彼らは集団の中で馴染むことが難しいと感じることがあります。サポートする人は、彼らの特性を理解し、そのニーズに応じた環境作りが必要です。彼らが安心して過ごせる環境を整え、無理なく集団活動に参加できるよう、柔軟な対応を心がけましょう。

 

⑮言葉の使い方

 

トラウマを抱える人は、人間関係でたびたび失敗を経験していることが多く、他者から投げかけられる言葉に対して強い恐怖を感じています。彼らにとって、言葉は鋭い刃物のように胸に突き刺さることがあり、その一言でフラッシュバックやパニック、身体の硬直といった深刻な反応を引き起こすこともあります。その結果、新たなトラウマが形成され、心の傷がさらに深まってしまうのです。

 

サポートする人は、彼らの特性を理解し、冗談が通じにくいことを念頭に置いて、慎重に言葉を選ぶ必要があります。特に、彼らが嫌がる言葉や不安を煽るような発言は避けましょう。また、言葉をかける際には、できるだけ丁寧で優しい伝え方を心がけてください。ただし、自分にできないことを安易に口にすると、彼らの希望を絶望に変えてしまう可能性があります。現実に則した、誠実で心からの優しい言葉をかけてあげることで、彼らに安心感を与え、心の支えになることができるでしょう。

 

⑯安心感や安全感

 

トラウマを抱えている人は、安全で安心できる環境にいると、青々と茂る草木のように穏やかに成長することができます。しかし、世界が危険だと感じたり、自分が脅かされていると感じると、頭が混乱し、無力感に包まれてしまいます。その結果、情動的な人格が前面に出て、第二の意識状態に支配されることがあります。この第二の意識状態では、人間に対して強い不信感を抱き、攻撃的になったり、迫害された犠牲者のように感じたりします。目に見えない敵に取り囲まれているように感じ、絶望的な状況に追い込まれていると感じるのです。

 

本来の自分とこの第二の意識状態は、同時に存在したり、交互に現れたり、時には混じり合ったりします。この変動が激しいため、トラウマを抱える人は、自己統制感を失うことへの強い恐怖を抱き、脅威を特定しようとして強迫的な行動に走ることがあります。また、安全で保護的な逃避場所を常に求めています。

 

サポートする人は、彼らが外の世界で安心できる場所を見つけられるように手助けすることが大切です。トラウマの治療においては、瞑想を通じて身体に安全感を取り戻すことが有効とされています。彼らが安心感を持って生きられるように、温かい支援を提供していきましょう。

 

⑰学校生活や都市型生活が苦手

 

人の悪意や強い痛みが原因でトラウマを抱えた人は、その後の人生において脅威を避けるために過剰な防衛反応を示すことが多くなります。このため、彼らは常に潜在的な脅威と戦い続け、人との距離が物理的に近づくと、強いストレスを感じます。学校や職場、人口密度の高い都市での生活において、彼らは疲弊しやすく、過度な警戒心から心身に大きな負担がかかります。

 

特に、脳のフィルター機能が弱い場合、駅や電車、バス、広場などの人混みでは、顔や表情、感情といった膨大な情報に圧倒され、身体が凍りついたように感じたり、体調不良や過呼吸を引き起こすことがあります。また、聴覚や気配に過敏なため、近所付き合いでトラブルが生じたり、自分が噂されているのではないかと過度に気にしてしまうこともあります。

 

さらに、解離傾向が強いと、生々しい刺激に対してシャットダウンを起こし、半ば眠ったような状態で日々を過ごすことになります。これにより、自分が自分であるという感覚を失い、ますます自分を見失ってしまうことがあります。

 

サポートする人は、トラウマを抱える人の過敏さや脆さを理解し、彼らがより安心して生活できる環境を整えるよう心掛けることが大切です。彼らの特性を理解し、負担を軽減できるような環境作りをすることで、日常生活が少しでも穏やかに過ごせるよう支援していきましょう。

 

⑱新規場面や新しい変化を嫌う

 

トラウマを抱えている人は、環境の絶え間ない変化に対して強い緊張を感じています。新しい場所や見慣れない状況に直面すると、不安が一気に高まり、交感神経が過度に活性化されてしまい、心が落ち着かず、頭の中が混乱状態に陥ります。自分で対処しきれないと、身体が固まって動けなくなり、息苦しさや胸の痛みといった身体的症状が現れることもあります。彼らは、自分自身の安全を守るために独自のルールや習慣を作り、環境の変化に強い抵抗感を示します。変化すること自体を恐れ、新しい状況にうまく適応できず、社会の枠組みに馴染むことが困難な場合も少なくありません。

 

傍にいてサポートする人は、彼らが変化を恐れ、新しい場面に対して強い不安を抱いていることを理解することが重要です。変化に対する恐怖を和らげるためには、環境の変化を最小限に抑え、彼らが安心できるような穏やかなサポートを提供することが求められます。彼らのペースに合わせて、新しい状況に少しずつ慣れさせることで、安心感をもたらし、社会的な適応力を高める手助けをしていくことが大切です。

 

⑲居場所の移り変わり

 

トラウマを抱えている人は、外部の気配や他人の存在に過敏に反応し、対人恐怖を感じやすい傾向があります。特に、トラウマが始まった場所に戻ると、警戒心が極端に高まり、身体が不安や恐怖で緊張し、心身のバランスが崩れていくため、自然とその場所を避けるようになります。また、恐怖や筋肉の硬直が「般化」と呼ばれる現象によって、さまざまな状況に広がりやすくなります。その結果、狭くて逃げ場がない場所(エレベーターや電車など)、外出、交通手段、仕事などが強いストレス源となり、最終的には日本そのものが不快な存在に感じられることさえあります。

 

このような状況から逃れるため、トラウマを抱えている人ほど、英語の勉強に励み、海外移住を希望する傾向があります。海外に移住すると、外の世界の気配が変わるため、心身の状態が改善され、自分らしく過ごせるようになり、生活の質が向上します。サポートする側としては、トラウマを抱えた人の精神が安定するような関わりが重要です。彼らは、自然の多い場所に癒しを感じ、神社仏閣に守られているような安心感を得ることができるため、これらの場所に連れて行くことも有効です。トラウマを抱えている人のニーズに寄り添い、安心できる環境を提供することが、彼らの回復に大きく寄与するでしょう。

 

⑳気配の移り変わり

 

解離傾向があると、昼と夜ではこの世界の見え方が大きく変わり、特に夕暮れどき(トワイライトゾーン)には不安定さが増し、性格が急激に変わることがあります。例えば、家庭内で虐待を受けてきた子どもは、学校にいる昼間の時間帯は外が明るく、周囲の気配にあまり影響されないため、元気に過ごすことができます。しかし、夕方に学校から家に帰る頃になると、体内に刻まれたトラウマが疼き始め、夜になると暗闇の気配に過敏になり、些細なことでも恐怖を感じ、被害妄想が膨らんでいくことがあります。

 

このように、トラウマを受けた場所や時間帯によって、その人の反応は大きく変わります。例えば、先の例とは逆に、昼間はたくさんの通行人がいるため、死んだふりをして生き延びるような感覚で過ごし、夜になると人通りが少なくなるので、かえって元気になる人もいます。

 

このような状態にある人は、昼と夜の環境変化に対して敏感であり、特に夕方から夜にかけての時間帯に注意が必要です。彼らが安定して過ごせるように、環境や日常のリズムに配慮することが重要です。

 

㉑気温・気圧の移り変わり

 

トラウマを抱える人の身体は、しばしば限界状態にあり、特に手足が一年中冷たく感じられることが多いです。彼らは、夏の雲ひとつない青空を好むことが多く、身体が凍りついていても、夏の暑さによって動けるようになるからです。しかし、冬になると気温が低いため、凍りついた身体はさらに冷え込み、ますます動けなくなってしまいます。また、季節の変わり目や温度差が激しい時には、風邪を引きやすく、体調を崩しがちです。

 

さらに、低気圧が近づくと、身体が縮こまり、過覚醒の状態に陥りやすくなります。この状態になると、イライラしやすくなり、頭痛や腹痛、吐き気、耳鳴りなどの体調不良を引き起こします。体が重く感じられ、動くことが困難になることもあります。このような状況に置かれた人は、特に季節や気候の変化に敏感であり、身体と心のバランスを保つために、日常のケアが欠かせません。

 

㉒大切な人に分かってもらえない

 

トラウマを抱えた人は、身体が弱くなり、感受性が豊かで繊細になりがちです。一方、トラウマを経験せず、身体が丈夫であるがゆえに鈍感な人たちは、トラウマを抱えた人々の苦しみを理解することが難しいです。例えば、幼い頃にトラウマを経験した子どもは、恐怖に怯えて体が凍りつき、脳が常に危険を察知するようになります。これにより、解離や離人感が現れ、身体感覚や時間感覚、感情がわからないまま成長していくため、体の感じ方や思考パターンが通常の人とは異なってきます。

 

このような人々は、自分が周囲と違うことを薄々感じながらも、その違いが何なのか悩み続け、自分の苦しみを理解してもらおうと必死に訴えます。特に、両親や恋人、配偶者との関係において、その苦悩が顕著になります。そばにいて支える人は、彼らの身体の弱さや独特な感じ方、考え方の違いがどこから来るのかを理解し、寄り添っていくことが大切です。

 

㉓自分と他人のこと

 

トラウマによって身体に不安が生じると、外部の気配に過敏になり、周囲の視線や反応を過剰に気にし、物事を先読みしようとします。その結果、感じ方や考え方、行動が極端になることがあります。このような状態にある人は、自分の物の見方が変わっていることに気づかず、周りの人々も同じように感じ、考えていると思い込むことが多いです。

 

そのため、自分の親が自分を理解してくれないと感じ、親が鈍感で自分とは正反対の性格で合わないと悩むことがあります。また、この世界中の人々が自分と同じように冷たく厳しい目で見ていると誤解してしまうと、大勢の人がいる社会の中で、常に緊張感を持ち続けることになり、気を抜くことができません。その結果、感じ取ること自体に疲弊し、最終的には動けなくなってしまうことがあります。

 

㉔眠るのが怖い

 

 解離傾向があると、夜の闇に対して過敏になり、影や光、物音、匂いなど、周囲の些細な刺激に敏感に反応してしまいます。これにより、身体感覚に異常が現れ、自分の部屋で寝ることが恐怖に変わることがあります。寝ようとすればするほど焦り、不安が募り、ますます気持ちが悪くなっていきます。そうなると、恐怖心が増し、頭の中はネガティブな考えでいっぱいになり、落ち着けずに部屋の中を歩き回り、パニックに近い状態に陥ることもあります。

 

さらに、寝るときに過去のトラウマが活性化し、悪夢や夢遊病、夜驚、中途覚醒、不眠など、さまざまな睡眠障害が生じることがあります。トラウマの影響で過覚醒状態が続くと、長期間にわたってほとんど眠れない状態が続き、身体が冷たく硬くなり、痛みや不快感が増して、ついには全く眠れなくなってしまうこともあります。

 

㉕偽りの自己

 

トラウマを負っている人の身体は、生命の危機を経験した記憶を深く刻み込んでいます。そのため、彼らは自分の意志よりも、生き延びるための「生きるか死ぬか」というモードで日常を過ごすことが多く、自己防衛のために無意識のうちに欺瞞的な行動をとることがあります。たとえば、誰かと話す際、本当の自分を隠して、周囲が望む人間像を演じてしまったり、相手に好かれようと無理をして猫をかぶり、心の中で思っていることとは逆の言動をとることがあります。

 

また、悲惨な家庭環境で育った場合、親の要求に従うことが生き延びるための唯一の手段となり、自分自身の考えや感情がわからなくなってしまうこともあります。こうした環境で育った人は、自分の意志を抑圧し続けてきた結果、他者に対して有効な自己主張ができず、ますます自分を見失ってしまうことがあるのです。

 

㉖傷つきやすくて

 

トラウマを抱える人は、健康な人に比べて5倍から100倍も傷つきやすいと言われ、その傷の深さに比例して、外傷関連の記憶や感情への恐怖が強く条件づけられています。このような恐怖が蘇ると、原始的な神経が作動し、体が硬直して凍りつき、過呼吸、パニック、フラッシュバック、離人感、現実感の喪失、機能停止、頭痛、腹痛、痺れ、震え、痙攣など、さまざまな身体反応が現れます。わずかな刺激でも圧し潰されるような痛みを感じ、非常に打たれ弱くなっているため、日常生活の困難に対応する際には、解離しながら対処せざるを得ない状況が生まれます。

 

成人後には、トラウマの影響でパーソナリティ障害を発症することが多く、自己愛性、境界性、回避性などの極端な対人関係のパターンが見られます。たとえば、恋人が浮気しているのではないかという疑念が生じると、すぐに身体が反応し、胸が苦しくなります。また、恋人の言動に恐怖を感じると、筋肉が硬直し、気管支が狭まって息がしづらくなる一方、体は酸素を求めて過呼吸を引き起こすことがあります。

 

しかし、こうした辛く苦しい経験をしてきたからこそ、彼らは同じように傷ついた人の痛みを深く理解し、人に対する思いやりや優しさを心の内に秘めていることも少なくありません。傍にいてサポートする人は、彼らの傷つきやすさを理解し、不安をできるだけ軽減できるような配慮を心掛けることが大切です。

 

㉗怖がりだから

 

人から傷つけられることへの強い恐怖を抱えているため、他人の悪意が怖くて、常にそれを回避しようと努めています。人に悪く思われると、その恐怖から自分をコントロールできなくなり、視野が狭まり、周りが見えなくなってしまいます。彼らは、できるだけ相手に合わせて敵を作らないようにし、悪く思われないように振る舞います。自分をよく見せ、相手を喜ばせ、争いを避けて平和を保つことを願っています。

 

しかし、相手の要求に応えすぎることで、次第に自分の意思を失い、相手が要求をエスカレートさせていく状況に陥ることがあります。耐えきれなくなった彼らは、我慢の限界に達すると横柄な態度を取ることがありますが、相手がその態度を受け入れてくれないと、ネガティブな感情がどんどん蓄積されていきます。そして、ついには怒りが爆発し、冷酷な態度を取って関係を壊してしまうこともあります。

 

傍にいてサポートする人は、彼らの気持ちを不当に利用することなく、常に味方であることを伝え、安全で安心できる居場所を提供することが重要です。そして、たくさん褒めて、彼らの存在を認めることで、自己肯定感を高めてあげましょう。

 

㉘体調不良

 

幼少期から体調を崩しやすく、喘息やアトピー、蕁麻疹などの症状を抱えていた人は、身体の中に常に不安を抱えていることが多いです。ちょっとした刺激でも身体が硬直し、人から傷つけられるのではないかという強い恐怖を感じやすくなります。集団に交わる場面では、身体が反応し、社会交流システムを司る神経の働きが遮断されることがあります。その結果、声が出なくなったり、些細なことに大げさに驚いたり、歩くのが難しくなったり、視野が狭くなったり、固まって動けなくなったり、ぼんやりとして思考がまとまらなくなるなど、さまざまな制限がかかります。

 

解離症状が重くなると、胸の痛みや呼吸困難、心拍数の低下が生じ、さらに倦怠感やめまい、吐き気、頭痛、パニックなどの身体症状に苦しむようになります。このような状態にあるにもかかわらず、周囲からは体調不良が理解されず、孤独に悩んでいることが多いです。

 

傍にいてサポートする人は、彼らが心を休められる唯一の場所となり、安心感を提供できる存在でいてください。彼らにとっての安らぎの場を作り、温かく見守ることで、少しでも心と体を癒す手助けをしてあげましょう。

 

㉙自己調整機能の障害

 

トラウマを抱える人は、通常の人に比べて気分の変動が激しく、覚醒度の自己調整がうまくいかないことがよくあります。覚醒が高まりすぎると、テンションが上がり、身体が自分の意思に反して勝手に動き始め、過集中状態に陥ります。この状態では、やり始めたら止まらなくなり、顔がカーッと熱くなって赤くなり、感情が高まって興奮状態に陥ることもあります。

 

トラウマを抱える人は、自分の身体の限界を正確に把握することが難しく、過覚醒がある一定の範囲を超えると、交感神経が過剰に働き、周囲に対して攻撃的な行動を取ったり、問題行動を起こすことがあります。一方で、身体が無意識にブレーキをかけることで、目の輝きが消え、麻痺や脱力状態に陥ることもあります。その結果、身体に無理がたたり、体調不良が現れたり、活動性が低下して動けなくなることがあります。

 

特に、重くて動けない身体に鞭打って無理を続けると、慢性的なうつ状態に陥ったり、身体の痛みが慢性化してしまうことがあります。傍にいてサポートする人は、トラウマによって自己調整が困難な人に対して、適切な休息の取り方や生活習慣の見直しを一緒に考え、無理のないペースで過ごせるよう支援することが大切です。

 

㉚自律神経系の調整不全

 

人前で極度に緊張すると、自律神経系の調整が乱れ、さまざまな生理的反応が引き起こされます。例えば、顔が赤くなったり、声が出なくなったり、汗が止まらなくなったり、息苦しくなったりすることがあります。また、身体感覚が鈍くなったり、手が震えたり、頭の中が真っ白になったり、身体の一部に痛みを感じたり、さらにはおならが出てしまうこともあります。このような反応を他人に気づかれないようにすることが非常に困難で、常に「バレたらどうしよう」という不安が頭から離れません。そのため、人前に出ること自体が億劫になり、避けがちになります。

 

このような状態にある人は、通常の人以上に事前の準備が必要です。リスクを回避するために、頭の中であらゆるシナリオを想定し、それに対する対策を考えてから行動に移ろうとします。こうした慎重な姿勢は一見有効ですが、過度に心配しすぎることで、逆にストレスを増幅させてしまうこともあります。

 

㉛感覚麻痺と対象を求める質

 

非常に苦しく、辛い日々を過ごしてきた人は、体が凍りついて心が麻痺し、自分の感覚や感情が分からなくなることがあります。こうした状態に陥ると、楽しいや嬉しいといった感覚や感情を取り戻すために、あらゆる手段を講じようとすることがしばしば見られます。例えば、相手を自分の思い通りに動かしたいと強く願ったり、相手に自分の気持ちを理解してもらうことで、初めて生きている実感を得ることができます。また、相手が喜ぶ顔を見ることで、自分自身が満たされると感じることもあります。

 

さらに、心の中のざわつきや身体の不快感を抑えるために、特定の物質や行為、過程に対して依存しやすくなり、それが生きている実感を得る手段となることもあります。このような依存は、やめたくてもやめられないほど強烈になり、次第に病的な質を帯びていくことがあります。彼らにとって、この依存対象が、唯一の安心感や生きる実感を得られる手段となりがちです。

 

㉜身体の中に流れるエネルギー反

 

トラウマを負った際、その衝撃で身体の一部が極度に硬直し、痛みや麻痺が生じ、凍りついたような感覚に陥ることがあります。この状態では、身体が動かせなくなり、正常な反応が阻害され、その結果、トラウマのエネルギーが身体の中に閉じ込められてしまいます。このエネルギーは、潜在的な脅威に対して敏感に反応し、身体の中を動き回るため、じっとしていることが困難になります。

 

さらに、トラウマを負った人は、他者の表情や反応に極めて敏感になり、相手に脅威を感じると、怒りや恐怖が湧き上がり、その場から逃げたくなったり、動けなくなったり、時にはネガティブな感情を相手にぶつけてしまうことがあります。一方で、相手が笑顔で自分の波長に調和していると感じた場合、その状況は愛やスピリチュアルな安心感に変わり、その場に安らぎを見出すことができるようになります。

 

このように、トラウマを負った人は、相手の視線や言葉に対して身体が過敏に反応し、元気になったり、体調不良に陥ったりすることがあります。そのため、彼らは他者を善か悪か、敵か味方かという二分法で判断しがちです。この過敏な反応によって、彼らの生活は極端に揺れ動くことがあります。

 

㉝トラウマの身体反応

 

トラウマを抱えている人は、神経が非常に繊細になり、身体の中でトラウマが疼きや焦燥感、驚愕反応などを引き起こし、まともに動けなくなったり、考えがまとまらなくなったり、手足が勝手に動いたり、場合によっては意識を失ったりすることがあります。トラウマの重症度が高い人ほど、これらの身体の反応を否定しがちですが、怖がれば怖がるほど、背側迷走神経が過剰に働き、身体がさらに動けなくなることもあります。

 

トラウマによるこれらの生理的反応は、人類が進化の過程で身につけてきた防衛メカニズムの産物であり、それを完全に消し去ることは難しいかもしれません。しかし、これらの反応を否定せず、受け入れることで、少しずつ自分を強くしていくことが可能です。自分の身体と心の反応を理解し、受け入れることが、トラウマからの回復への第一歩となるでしょう。

 

㉞注意や集中の問題

 

トラウマを抱える人は、警戒心が過剰になると、外界のあらゆる刺激に注意が向き、それらをすべて受け取ろうとするため、感覚が過負荷となり、目の前の作業に集中できなくなります。不快な状況下では、闘争・逃走反応が過剰に働き、聴覚過敏になることがあります。また、身体が凍りつくような状態になると、集中力が低下し、解離性健忘や注意散漫が生じやすくなります。さらには、ストレスに対処できなくなると、低覚醒状態に陥り、まるで半分眠ったような生活を送ることもあります。

 

トラウマを抱えた人は、危険を感じると意識が外に向き、自分自身に注意を向けることが難しくなります。その結果、注意の持続や集中が困難になり、忘れ物が増えたり、遅刻が多くなったり、片付けができないといった問題が生じます。これらの課題に対処するためには、自分の警戒してしまう体と向き合い、呼吸法や瞑想、ヨガなどを取り入れることが有効です。これらの方法を通じて、自分の内面に注意を向け、集中力を高めることができるでしょう。

 

㉟孤独で人に依存する

 

複雑なトラウマの影響で、自分の内面が空虚に感じる人は、その空虚さを埋めたくて、必死に多くの人と繋がろうとします。一人になると、孤独や寂しさ、心細さが募り、落ち着かなくなりがちです。こうした不安を紛らわせるために、友人と頻繁に出歩いたり、夜遅くまで飲みに行ったり、何度も友人に電話をかけたり、一日に何十通もメールを送ったりすることがあります。

 

彼らは誰かに依存し、自分を大切に思ってほしい、必要としてほしいという強い願いを抱いています。しかし、こうした依存心から生まれる関係は、互いを思いやる本当の友情とは異なり、逆に孤独感を深めることが多いのです。また、相手に過度に依存することで、相手に迷惑をかけてしまい、その結果、自分の孤立感がさらに強まるという悪循環に陥ることもあります。

 

㊱付き合い方

 

トラウマを抱え、敏感な人は、その時々の人間関係や環境に大きく影響を受け、自分の状態が大きく変わることがあります。自己感覚が強くなったり弱くなったり、体調が良くなったり悪くなったりするため、彼らの中には、自分の存在感を誇張してアピールし、積極的にリーダーシップを発揮して、自分の思い通りに物事を進めたいタイプの人がいます。このタイプは、自分の思い通りに事を運んでいるときに生き生きと感じ、自己肯定感が高まります。しかし、他人に合わせることが苦手で、自分のやり方を貫けないと気分が暗くなり、息苦しさを感じることがあります。

 

一方で、人間関係に対して消極的で、他者に静かに従うタイプの人もいます。このタイプは、自分の意見を強く主張することにあまり興味がなく、リーダーシップを取りたいとは思わないため、自己主張の強い人に対しては距離を置くことが多いです。何が何でも勝ちたいという気持ちがないため、自己主張の激しい人を見ると、一歩引いて様子を見守ることが多く、自分のペースで静かに過ごそうとします。

 

㊲トラウマの二重性と整合性

 

トラウマを抱える人は、過去の辛い記憶が蘇ると、表面的には冷静を装っていても、内心では全身がこわばり、追い詰められているもう一人の自分が存在しているかのように感じます。そんな時、叫びたくなったり、パニックに陥ったりする衝動に駆られ、考えるだけでもしんどさを感じます。日常生活を送る自分は、外傷的な記憶を避けるように作られ、現在の時間を生きようとしますが、もう一つの自分は、外傷的な記憶に縛られ、過去の時間に囚われ続けています。これら二つの感覚が自分の中に共存し、あたかも正常であるかのように日常生活を過ごそうとする一方で、快か不快かを敏感に感じ取り、不快な感覚を避けるようにします。不確かな状況に対しては耐えることが難しく、安定感のない自分を整えるために、自分が正しいと信じたい気持ちから、細かい事例を集めて論理的に武装し、自らの立場を正当化しようとします。

 

傍にいてサポートする人は、自分の意見を押し付けて彼らの整合性を崩すよりも、彼らの苦しさや葛藤を理解し、どうすれば自分を守れるかを一緒に考えていくことが大切です。彼らが感じている痛みや不安に寄り添い、安心できる環境を提供することで、少しずつトラウマからの回復をサポートしましょう。

 

㊳あまのじゃくで反発してしまう

 

幼少期から親に愛情を求めても、返ってきたのは非難や拒絶ばかりだったという経験が、心に深い傷を残している人がいます。彼らは、自分の気持ちを素直に表現しようとすると、必ずと言っていいほど嫌な気持ちにさせられてきました。そのため、自然と本音を隠すコミュニケーションスタイルを身につけてしまい、自分を「よい子」に見せようとしたり、あまのじゃくになったり、駄々をこねるような態度を取るようになります。さらに、何もしていない自分には価値がないと感じているため、愛されたい一心で一生懸命に努力しますが、心に余裕がないためイライラしてしまい、その結果、逆効果となる言動を取ってしまいます。そうした状況では、人生を良くしようとする努力や変わりたいという願いに対しても、内心では反発してしまうことがあります。

 

傍にいてサポートする人は、彼らが自分の気持ちを素直に表現できるようになるまで、無理に変わらせようとせず、ただ傍にいて話を聞いてあげることが大切です。相手にとって「無害な存在」であり続け、安心して自分を表現できる環境を作っていくことが、彼らの心を癒す第一歩となります。

 

㊴迫害的な世界

 

発達早期にトラウマを経験した人は、身体(筋肉や内臓)が常に恐怖に怯え、脳に危険信号を送り続けるため、頭の中は絶えず警報が鳴り響いています。このため、警戒心が極端に過剰になり、周囲の気配や環境に対して過敏に反応するようになります。彼らは、人の表情一つで感情が大きく揺さぶられ、特に怒った顔が非常に苦手です。また、人の気配や音、匂いといった目に見えない要素を、想像上の脅威として感じることがあり、それが自律神経系に悪影響を与え、身体全体に嫌な感覚が纏わりつくように感じます。

 

脅威を感じると、筋肉が硬直し、喉が締め付けられて胸が苦しくなり、息苦しさが増します。また、血圧が低下してめまいやふらつきが生じることもあります。一方で、筋肉が緊張から崩壊するような感覚になると、消化器官の活動が活発になり、吐き気や腹痛を引き起こすことも少なくありません。こうした脅かされる状況が続くと、生きるか死ぬかというモードが長期間維持され、目に見えないものまで恐怖の対象となり、生活空間が悪化するほど、この世界全体が恐ろしく感じられるようになります。最終的には、常に自分が脅かされているという被害者意識に囚われ、心身ともに苦しむようになります。

 

㊵嫌な記憶を忘れにくい

 

トラウマを抱える人は、常に脅かされる状況で生活してきたため、物事がどう進展していくかについて強い不安を感じ、それを解消しようと物事を徹底的に突き詰める傾向があります。生き残るために周囲の様子を鋭く観察し、細かな変化に敏感で、小さなことでも注意を払い続けるため、自然と記憶力が高くなります。危険な目に遭ったり、不当に叱られたりといった感情を揺さぶられる経験が多いため、その感情の振れ幅が大きいほど、嫌な記憶として強く残り、細かいディテールまで鮮明に覚えていることが少なくありません。

 

特に、危機感を覚えた瞬間から人の記憶が鮮明に刻まれると言われており、早い段階でトラウマを負った人は、発達早期からの記憶を持ち、並外れた記憶力を発揮することがあります。その結果、過去の体験がいつまでも心に影を落とし、感情や思考に深く影響を与え続けます。このような特徴を持つ人は、他者との違いに苦しむことが多く、その記憶力が彼らの苦悩の一因にもなっているのです。

 

㊶目的や役割があるかないか

 

複雑なトラウマを抱える人は、差し迫った危機に対する防衛反応から、過覚醒と低覚醒の間を激しく行き来する特徴があります。好奇心に突き動かされているときや、仕事や子育て、学業、社会活動といった明確な目的や役割があるうちは、活発に思考し、行動することができます。しかし、長時間の労働や満員電車に疲れ切ってしまうと、家に帰った途端、体力が尽きてしまい、何をするにもエネルギーが残っていません。喉が渇いても飲み物を取らず、歯を磨くのも億劫で、お風呂に入る気力すらなく、ただ眠りたいという状態に陥ります。

 

さらに、生きていく上での目的や役割を失ってしまうと、慢性的な虚無感が押し寄せ、現実感を喪失し、自分の軸を見失います。まるでエネルギーが完全に枯渇したかのように、半分眠ったような状態に陥り、日常生活をこなすことすら難しくなってしまいます。トラウマがもたらすこのような状態は、心と体の両方に深刻な影響を及ぼし、生活の質を大きく損なうことが多いのです。

 

㊷人間関係が同じ失敗の繰り返し

 

複雑なトラウマを抱える人は、たとえ自分では不快だと感じていなくても、また相手に悪意がなかったとしても、無意識のうちに過去の経験を繰り返してしまうことがあります。その結果、対人関係において同じ失敗を何度も繰り返し、人間関係がうまくいかなくなることが少なくありません。例えば、学校や職場で苦手な人がいると、無意識にその人を親に投影し、脅かされているように感じてしまい、過覚醒やその他の症状が現れて、混乱し、逃げ出したくなることがあります。

 

解離の症状が重くなると、時間の連続性が断たれ、自分の知らない間に何かをしてしまうことがあり、その結果、相手も自分も混乱し、非常に悩ましい状況に陥ることがあります。こうした状況では、傍にいるサポート役の人が、同じ失敗を繰り返さないために、新しい行動パターンを一緒に見つけてあげることが重要です。新しい行動を模索し、それを繰り返すことで、少しずつトラウマの影響を軽減し、より健全な対人関係を築いていくことが可能になります。

 

トラウマケア専門こころのえ相談室 

論考 井上陽平

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解離研究

障害となる解離症状では、生活上の不安や恐怖、痛みで神経が張りつめており、身体は収縮して、凍りつきや死んだふり、虚脱化して、背側迷走神経が過剰に働き、脳や身体の機能に制限がかかります。

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トラウマの正体

トラウマは、捉えどころがなく、体や心のどこに潜んでいるかわからない不可視なものでしたが、今では、過去のトラウマの経験が体のどこかにあり、恐怖に関連したことが蘇ると、体が硬直していく現象です。

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ボーダーカップル

ボーダーラインカップルは、自己愛的な男性はありったけの愛情で答え、ボーダー的な女性は些細なことで幻滅します。その後も、償いや許しのドラマが繰り広げられて、劇的で際限のない愛の世界に発展します。


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トラウマケアの効用

トラウマ治療では、頭で自分の状態に気づくトップダウンと、体験を通して自分を変容させていくボトムアップの両面が必要になり、心身の両面にアプローチしていくことになります。

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解離症の人の接し方

体が凍りつきの迷走神経反射により、あらゆる症状が出て、体調不良になるのが特徴です。人間が苦手で、自分のことで精一杯になり、人間関係を回避して、感情を切り離します。

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ボーダーとの接し方

境界性人格障害の人とのお付き合いの仕方をまとめています。支援する人は、①嘘をつかない。②裏切らない。③見捨てない。この3つの約束事を守るようにしましょう。