トラウマの正体

▶トラウマというのは

 

トラウマというのは、戦うこともできないぐらいの戦力差があり、逃げようとしても、捕まえられて、力づくで押さえつけられてしまう環境下で起こります。過酷な環境で、強敵を目の前にしても、本来の自分が戦うか逃げるかできれば、トラウマの度合いも低くなります。しかし、強敵に襲われて、決死の覚悟で戦いを挑むものの、圧倒されたときは、退避できるかどうかが生死に関わります。退避できない場合は、望みは失われて、頭の中が真っ白になり、身体が凍りついてトラウマを負うことになります。そして、自分が動けなくなるか、または離人症のようになって、闘争モードのまま身体が勝手に動きます。さらには、強敵を目の前にして、肩や首、胸は固まっていき、逃げたくても、足がワナワナガクガ震えて、体全体に力が入らなくなり、脱力することがあります。また、死んだふりをして危険をやり過ごすこともあり、敵が背を向けたら、見境なく反撃しようとする力が湧き起こります。全身が凍りついた後に、絶望がやってくると、心や身体が冷たく重くなり、崩れ落ちます。また、崩れ落ちる前に、機能を停止させて、最小限のエネルギーでその場に留まろうとします。

 

自分が生きる死ぬかのような状況ではないですが、対象に見捨てられて、望みを失うとか、対象を助けられないことで、取り返しのつかない恐怖を感じて、身動きが取れなくなり、トラウマになることがあります。例えば、親の愛情を失うかどうか、親が死んでしまうかどうか、親が離婚してしまうかどうかで、子どもの心と身体は、虚脱に至るか、重くなり崩れ落ちるか、固まり凍りつくことがあります。また、自己愛の強い親やボーダー的な親、怯えの強い親に振り回されながらも、良い子でいようとする子どもは、頭の中が真っ白になって、身体は固まり閉ざされていくことがあります。このようなストレスとトラウマが長年に渡って続くと、身動きがとれなくなり、恥や敗北、無力化されていって、全身が衰弱していきます。

 

様々なレベルのトラウマがあります。中程度のトラウマとは、敵に対して闘争・逃走反応を示します。闘争・逃走のトラウマ体験は、交感神経が過剰に働いて、呼吸は浅く早くなり、動悸は激しく、胸がざわついて、顎は下に引っ張られ、肩は上がり、歯を食いしばり、こめかみがドキドキし、顔は赤くなります。重度のトラウマとは、切迫した状況や切迫した選択肢に迫られ、望みが断たれて凍りつく反応を示します。凍りつくようなトラウマ体験を受けると、より原始的な神経が働くため、胸が痛くて、息が止まったようになり、声も出なくて、涙が出てきて、動けなくなります。最重度のトラウマとは、逃げたくても、足や手に力が入らず、首や肩が固まったままで、体全体が脱力していきます。また、血の気が引いて、全身が鉛のように冷たく重くなり、人を動けなくして、うつ状態にします。また、絶望により、身体がバラバラになるとか、捻じれるような感覚があって、崩れ落ちます。原始的な神経の働きが過剰になると、手足が固まるか脱力して、生命を維持するための最小限のエネルギーが使われますが、胃と腸だけは活発に活動して、気持ち悪く、嘔吐や下痢を引き起こします。最重度のトラウマは、凍りついた身体の中で恐ろしいことが起きるので、機能を停止させて、解離や離人症のようになり、あちら側の世界に飛んで、神秘体験をしている人がいます。一方で、ブラックホールに吸い込まれて、跡形もなく消えるような体験をしているかもしれません。身体反応は、顔は真っ青になって、指先も青くなります。また、全身が冷たく、重くなり、胸が痛み、お腹は気持ち悪く、痛みで体が身悶えて、身体が動かなくなります。

 

トラウマを負った人は、理性で本能や過覚醒を抑制しています。また、人間は、社会化した動物のため、身体を震わせ、自然終息させる場所が無かったりします。さらに、現代人は、頭ばかりで生きるように習慣化されているため、身体に注意が向けることをしていなくて、身体の中にトラウマを閉じ込めています。トラウマを身体の中に閉じ込めていると、炎症を起こして、神経が過敏になって、身体に様々な症状が表れます。そして、身体が危険を感じるたびに、気管支が細くなって、喉がつっかえたようになり、扁桃性やリンパが腫れやすく、神経を圧迫する痛みが出てくるかもしれません。また、脳が危険かどうかを瞬時に判断しようとしているので、情報処理能力が過剰で過敏になります。身体の中は、通常の人よりも、ストレスホルモンが減っていく速度が遅く、いつまでも脅威、不安、イライラ、怒り、不快感に汚染された状態であるかもしれません。凍りつくようなトラウマを負っている人は、人に悪意を向けられることを恐れていて、身体は過度に緊張し、臆病な性格で不安や動揺を感じやすく、うつや被害妄想、解離症状、身体症状に苦しむことになります。また、長期に渡り、慢性化したトラウマの影響は、人を不眠、生きた屍、慢性疲労、慢性疼痛にさせます。

 

▶恥というトラウマ

 

トラウマによる闘争や凍りつきの反応は、恐怖だけでなく、恥の感情などでも起こります。特に、子どもの頃から、様々なトラウマにより自律神経系の調整不全がある人は、恥の感情に弱く、外側の刺激によっては、自分自身をコントロール出来なくなります。人前で恥をかく場面は、恥をかかす他者との力関係から太刀打ちできないことがあります。また、恥をかかされて怒鳴ってしまうことは、自分を取り乱して、コントロールできないことが、社会的に不利に働くため、自分で抑えるしかありません。さらに、恥をかかされたからといって、その場から逃げ出すことは、社会通念上不適切な行動と取られるかもしれません。一般的に、恥をかかされた人は、その場に立ち尽くすことで、動悸が激しくなったり、胸が痛んだり、呼吸がしづらかったり、手足が震えたり、赤面したり、頭が真っ白になったり、凍りついたり、バラバラな感覚があったり、足や内臓が捻じれたりすることがあります。そして、恥をかくことが凍りつきや崩れ落ちるトラウマになると、恥をかくことに恐怖し、恥をかくことにより自分をコントロールできなくなることを恐れます。そして、恥の体験や感情の高ぶり、生理的混乱、自分で自分をコントロールきないという恥が二重、三重の恐怖のサイクルを作り出します。このサイクルにはまり込むと、恥をかくような自分は最も最悪な事態を引き起こすので、学校や組織などの集団場面を恐れるようになります。学校では、教育理念の枠組みから外れると、人前で吊し上げられたり、公開処刑のような恐怖や恥を与えることがあります。ですから、恥のトラウマがある人は、世間体を気にして、周囲の反応ばかりに注意が向き、自分を良く見せることで自分の安全を確保します。そして、高められた自己像と低められた自己像の間でスプリットを起こして、自分は正しくて、それ以外の意見は間違っているとか、不快なものを避けるとか、予測外の出来事を恐れるようになります。さらに、危険かあるかどうかを細かくまで見ていって、疑い深く、心配性で、神経質な性格傾向になります。その結果、自己イメージの歪みや他者に求める質が極端になるなど、パーソナリティ障害になることがあります。

 

▶自律神経系の働きと身体症状 

 

人はトラウマを負うと、自律神経系の調整不全に陥ります。身体が過度に緊張して、交感神経が過剰(アクセルを踏むと)になると、原始的な背側迷走神経(ブレーキがかかり)が働くようになるので、凍りつきや体調不良が起こります。人から傷つけられるかもしれないとか、悪意を向けられていると感じると、胸が絞めつけられて苦しくなります。人は原因不明の身体症状を、自分の神経の働きとは考えられず、外側の世界に要因に求めるようになります。その結果、トラウマによる外傷体験だけではなく、原因不明の身体症状を引き起こす、外の気配にも怯えるようになります。この悪循環にはまることにより、身体症状や外の気配に怯えて、恐怖するようになり、トラウマによる原始的な神経の働くメカニズムに閉じ込められいきます。そして、年齢を重ねるごとに、その傾向は強くなり、外の世界を生き生きと感じることが難しくなり、解離傾向は高まります。また、慢性的な疼痛、疲労感に悩まされるようになり、社会交流は難しくなって、活動性は低下していきます。

 

▶様々な場面で引き起こされるトラウマ

 

たとえば、家庭場面でしたら、親から子どもへの虐待はさまざまなトラウマを負う可能性があります。特に、養育者から性的虐待を受けた子どもは、恥や凍りつき、崩れ落ちる、バラバラになるようなトラウマを負うことがあります。身体的虐待を受けた子どもでは、闘争や凍りつき、崩れ落ちるようなトラウマを負うことがあります。心理的虐待やネグレクトを受けた子どもは、感情・自己調整機能に障害が出やすく、凍りつきや崩れ落ちるようなトラウマを負いやすくなります。また、夫婦の激しい喧嘩をしていて、それを見ている子どもは、警戒心過剰や闘争、凍りつきなどのトラウマを受けることがあります。その他、母子関係のこじれや兄弟葛藤、親側に怯え、ヒステリー、トラウマがあり、母親の顔色を伺いながら育った子どもは、何度も振り回されてしまうことで、疲れ切って、うつや凍りつくトラウマになることがあります。

 

次に、学校や子どもが施設で育つ場合は、大人から問題児へのホールディングという名の押さえつけがあると、闘争や凍りつき、崩れ落ちるようなトラウマを負うことがあります。また、学校でいじめにあうとか、学校の先生に不条理に目にあわされると、恥や闘争、凍りつき、崩れ落ちようなトラウマを負いやすくなります。医療場面でしたら、医療関係者から患者への身体拘束で、凍りつきや崩れ落ちるようなトラウマを負うことがあります。手術ミスなどを受けた場合は、凍りつきや崩れ落ちる、バラバラになるようなトラウマを負うことがあります。ぞっとするような事件に巻き込まれ、加害者に言いなりになって過ごすような場合は、闘争、凍りつき、崩れ落ちるトラウマになることがあります。自然災害や交通事故に遭うことで、凍りつきや崩れ落ちるようなトラウマを負うことがあります。仮死状態で生まれてきた子どもは、生まれながらにして凍りつくようなトラウマを負っています。

 

▶トラウマ性の根本は、

 

トラウマのストレスを受けた人は、3つのFが生じると言われています。身体と情動を司る大脳辺縁系で生じる現象で3Fと呼ばれており、闘争、逃走、凍りつきの3つの状態で生存を高めるための反応です。原始時代から、人間の祖先たちは、凶暴な動物に襲われて、危険な場面に遭遇したときに、この3Fが起きるように脳の中にインプットされています。また、3F以外にも、凍りついた状態で、さらに追いつめられると、手足が脱力するか、全身が崩れ落ちるか、バラバラになるという最も深刻なトラウマがあります。このようなトラウマを負って、原始的な神経の働きが優位になり、トラウマティックな脳になると、頭の中が過剰に警戒していき、危険があるかどうか立ち止まって、視覚や聴覚を働かしながら、細かいところまで調べています。そして、危険を感じると、その対象を凝視してしまい、身体のほうは戦うか逃げるかの反応をして、緊張が高まります。

 

▶トラウマのメカニズム

 

トラウマというのは黒い渦のなかに吸い込まれていくような体験と言えます。身体は、喉が苦しく、胸は絞めつけられて痛く、息がしづらく、涙が出てきているかもしれません。ピーター・ラヴィーンは、トラウマの恐怖・不動のサイクルについて、逃走の失敗があり、恐怖と無力感の体験をして、身体が不動化(凍りつき)し、そして、覚醒する。これは恐怖と不動(凍りつき)が互いに燃料を供給し合う悪循環を示ししている。これが私たちを飲み込み、トラウマの「ブラックホール」に閉じ込めるメカニズムであると述べています。

 

▶加害者と被害者の支配服従

 

トラウマを負わせてくる自己愛的な加害者は、被害者に有無を言わさず力づくで服従を強います。加害者の理不尽ないいつけにより、被害者は自発的な選択が奪われ、自分の意志を押し殺します。さらに、身動きが取れない状況に追い詰められると、焦燥感は高まりますが、どうしようもできない場合は、思考力が低下して、判断能力が落ちます。過酷な期間が続くと、苦痛に耐えられくなり、精神的に参ってしまい、知らず知らずのうちに、感情が無くなり、自分の感覚も無くなっていき、失感情症、離人症、うつ病になります。身体の方も、不眠、めまい、頭痛、腹痛、吐き気など様々な症状が表れます。

 

過酷な環境にいると、被害者は加害者に対して境界を張って、自分を守ろうとします。しかし、追いつめられていくと、自分自身にも過酷になって、自然なありのまま自分の状態を拒んだりします。その一方、加害者が境界を破ってくる場合は、自分の境界を下げて対応するしかなくなります。被害者は、みじめな自分になって、自分を貶めるような行動を取ったり、加害者の言いなりになることがあります。また、長期に渡ると、被害者は、加害者のテリトリーのなかでじっとするようになり、凍りつくような痛みを感じながら、抜け出すことが困難になります。

 

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