心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの対応は
トラウマの対処法

 

トラウマ記憶を思い出すことはつらいことなので、目を背けたくなるのは、人間の正常な心理です。しかし、トラウマから目を背け続けると、こころと身体に傷として残り、いつまでも生活に支障をきたす場合があります。トラウマの対処法は、自分のトラウマ体験をたくさんの人に話すことが良いと思われます。親や夫婦、友人に対して、たくさん話してその出来事に対して距離を置いて見れるようにすることが大事です。しかし、実際には、トラウマ体験を語ることの抵抗とか、困難の壁にぶつかるようになります。親や友人は、最初のうちは話を聴いてくれたりしますが、通常の人は、トラウマを負った人に同調することが次第に難しくなり、最悪の場合は、みんなそれぐらいは辛い思いをしているとか、あなたの方も悪かったじゃないとか、加害者の方の気持ちになってみたらとか言い出しかねません。そして、トラウマを負った人は、分かってくれないとイライラして、自分を理解してもらうことを諦めます。被害に遭った苦しみや今の症状を誰にも話せず、悟られないように必死になり、周りの人々から距離を置き始めていきます。周りの人々から、距離を置けば置くほど、孤立していき、疎外感を感じるようになり、世間一般の人々がする会話を全く楽しめなくなります。ですから、最初は、安全・安心な関係を作るために、自助グループや支援施設、SNS等で同じような背景を持った人同士で会話していくのが良いかもしれません。また、トラウマ体験を誰にも相談できず、話せる相手が見つからない場合は、早い段階で信頼できるトラウマやこころの専門家に相談してみるのが良いでしょう。子どもの頃からトラウマを負っている人の場合は、トラウマを専門にしている専門医や治療施設、カウンセリングルームに行くのが一番良いと思われます。カウンセリングの専門家であれば、しっかりと話を聴きますし、どんな話の内容でも態度を変えることなく接します。できる限り、安心できるように、自分が思ったことを話していけるようにと心掛けています。

 

トラウマへの心理療法は

 

一般的な心理療法では、自己理解を通して自分の長所や短所を知ることにより社会を上手に生きていけれるように支援しています。しかし、トラウマにより心の余裕を失った状態では自己理解することが難しいものです。さらに、トラウマを負った人の症状や問題行動を繰り返すのは、心理的・精神的問題というよりも、脳内で実際に起こった変化や身体の記憶、情動を司る神経系に起因することの影響の方が大きいと言われています。薬物療法による治療は、脳や身体の神経に働きかけて、睡眠を取れるようにしたり、不安や恐怖を低減する一定の効果があるので、日常生活の困難やストレスを引き下げることに役立ちます。ただし、一度飲むと飲み続けなければならず、外の世界の人々と繋がり、喜びを分かち合うという社会的交流を促進したり、自分の身体とお友達なるような感覚を育んだりしないので本質的な治療方法とは言い難い面があるのも事実です。トラウマの治療法としては、支持的な心理療法が一般的ですが、一過性・単発性のPTSDには暴露療法やEMDRが有効です。ただし、特定不能の解離性障害や解離性同一性障害、複雑性PTSDなど子どもの頃から複合的なトラウマを負っている方には、暴露療法やEMDRは体調不良や情緒不安定を引き起こし、有害(自殺、自傷、破壊、闘争、逃走、麻痺、嗜癖などの問題行動)になってしまうことがあります。暴露療法を行うことで、複雑性PTSDの方は、過覚醒からより重い解離状態に陥り、思考や感覚、感情、意欲が低下することがあります。また、特定不能の解離性障害、解離性同一性障害の方は、一時的に、フラッシュバック時の記憶は蘇り感覚を取り戻せますが、日常場面では、自我意識よりも、恐怖による無意識(解離の原始的システム)の方の働きが強いため、記憶や感覚は戻ってはまた消えてを繰り返します。やがて元の状態に戻り、心身のバランスが崩れるだけに終わってしまって、症状が悪化することがあります。暴露療法やEMDRは、日常生活の困難にさせるストレッサーが無くなり、身体・時間感覚が本来の姿に戻り、未来を肯定的に見られるようになって、この現実世界の人々と十分に関われるようになってから行うべき治療法です。また、トラウマが根深く複雑に絡み合って、到底耐えられないような恐怖記憶になっている場合は、身体の中に凍りつかせたままにしておいて、生活していくことも選択肢の一つになります。

 

トラウマへの当カウンセリングルームの取り組み

 

当カウンセリングルームでは、まず、セラピストがあなたの話を丁寧に聞き取り、今まで誰とも共有できずにいたこころの痛みや、ないがしろにされてきた自分の人生から自由になっていけるように支援します。そして、花や木が水や光を得て育っていくように、トラウマを負った人が生き生きとこの世界との繋がりを感じ、現在をしっかりと思う存分生きていると感じ、自分の人生を歩んでいけまように支援していきます。トラウマというのは、心理学的な問題だけでは説明できない部分が数多くあるので、こころとからだの両面に直接作用するようなアプローチが求められています。そのため、カウンセリングでは、心理的意味を扱って対話を行う言葉のみの交流だけではなく、体の緊張からくる防衛的態度や恐怖体験による麻痺症状、情動に溢れた過覚醒に焦点を当てたマインドフルネス瞑想や呼吸法、ソマティックエクスペリエンス(身体志向アプローチ)、イメージ療法、ゲシュタルト療法を取り入れてます。まずは、目をつぶって、リラックスしてもらい、人間の最も洗練されたシステムを働きかけることで、頭がスッキリして、いろんなことが思い浮かんでくるようになります。その思い浮かんだことを、あんなことやこんなこともあったとセラピストに話していき、安心できるイメージを心の中でしっかり持ち、安全な感覚を身体の中で見つけます。次に、安全な身体感覚と凍りついたトラウマに注意を向けていき、その間を振り子のように行き来することで、凍りついたトラウマを溶かし、温かくリラックスした状態に体質が変わっていきます。トラウマを解放していくと、身体の中の凄まじい緊張がほどけて、身体的な症状も改善されていきます。

 

また、カウンセリングでは、安心できる環境作りや良い体験をしてもらうことに比重を置き、望ましいイメージを作っていきます。今までの否定的な人生の物語を作っている人に対しては、肯定的な物語に書き換えて、体質の改善を図ります。さらに、セラピストとの対話の空間で浮かび上がる感情やこころの動きを見つめていきます。そして、再び被害を受けるわけではないと理解できるようにしたり、過去と現在の区別ができるようにしていきます。あとは、希望があれば課外活動を併用や、身体に閉じ込められたトラウマに焦点を当てて、未完了の行動に取り組んだり、一つ一つの実際の経験の中で実感を持つことができるような支援が必要であると考えています。個人カウンセリングと課外活動を並行することで自分の内から沸き起こる力が再び活性化して、症状が軽減し、生活が自由になります。そして、症状により自分を覆っていた防衛が取り去られ、周囲にやわらかく、自分に優しくといった変化に気づくことになります。

 

最終的には、トラウマの支配から自由になり、本来の自分(身体や時間感覚、情動、思考)を取り戻せるように援助します。すなわち外の世界の人々の中で、再び能動的に喜びや快感が追求できるような自己の感覚の確立が目標になります。カウンセリングの場というのは、非常に人工的なので、本当の意味でのトラウマ治療とは言い難い側面があります。荒技にはなりますが、実際の場面で喜びや快感、痛み、防衛しようとする態度を実感しながら、支援者の適切な状況把握のもと、外の世界でマインドフルな状態を保つことこそが心的外傷の回復には最も有効です。ただし、注意点としては、快感を感じることに取り憑かれたり、支援者に対する過度な依存にならないようにする配慮が必要です。

 

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